Arm、タイムクリティカルな自動車設計を強化する「Arm Cortex-R52+」を発表

March 02, 2021

 

タイムクリティカルな車載アプリケーション向けに、さらなる機能安全と柔軟性、リアルタイム性能を提供

英Arm(本社:英国ケンブリッジ、日本法人:神奈川県横浜市、以下Arm)はこのたび、Arm Cortex-Rファミリーの最新リアルタイムプロセッサーである「Arm Cortex-R52+」を発表しました。これにより、処理速度が重視されるタイムクリティカルな車載アプリケーション向けに、さらなる機能安全、設計の柔軟性、および高いリアルタイム性能を実現します。

今日の自動車設計は、3つの重要な局面でそれを満たす厳しい要求に直面しています。はじめに、自動車の電動化が急速に拡大しています。Strategy Analytics社によると、2027年には、全世界で販売される自動車の40%が、部分的あるいは全面的に電動化される見通しです。次に、コックピット、エンジン、シャシー、駆動系の高度な機能を取り扱うには、ソフトウェアの最適化とアプリケーションの統合は避けられず、リアルタイム機能を含むさまざまな演算機能を組み合わせる必要があります。最後に、セーフティクリティカルな電子部品の割合が増加しており、ISO 26262など自動車の機能安全規格を遵守した設計が求められます。

電子制御ユニット(ECU)も増加の一途をたどっており、現代の自動車には100個を優に上回る個別のECUが搭載されるケースもあります。高級車メーカー各社によると、ECUの数は毎年平均4個の割合で増加しています。こうしたECUの増加は、配線の複雑化、高コスト化、重量化を伴うため、自動車設計者の間では、演算機能を大幅に高めた少数のドメイン/ゾーンコントローラーに多数のコントロール機能を組み込むなど、設計の統合化が進んでいます。

今後は、ますます多くのアプリケーションが同一のコンピューティング・リソースを共有することで、仮想化も必要となります。仮想化が導入されている分野の1つに、クリティカルなタイミング機能を取り扱い、安全地帯を管理するプロセッサーコアがあります。タイミングクリティカルなシステムがドメイン/ゾーンコントローラーに統合される中、設計者に求められるのは、決定論的なリアルタイムの実行機能を維持する能力です。

 

自動車の機能安全とセキュリティを強化

このような、進化する厳格な自動車の設計要件にOEM各社が対応できるよう、Armは車載コンピューティング製品への投資を拡大してきました。2020年の1年間で、Armは次世代の強力なCPU、GPU、イメージシグナルプロセッサー(Arm Mali-C71AEなど)をリリースしてきました。こうした製品は、車載用途のISO 26262 ASIL B / ASIL Dや、産業用途のIEC 61508 SIL 2 / SIL 3の完全性要件を対象とし、安全関連システムに導入できるよう設計されています。

ArmのリアルタイムプロセッサーであるCortex-Rファミリーは、このような自動車設計の進化を積極的に支えてきました。そしてこのたび、Cortex-Rファミリーの最新版としてArm Cortex-R52+プロセッサーが発表されました。

Arm Cortex-R52+は、機能安全の要件に対応しつつ、リアルタイム・アプリケーションでより豊富な構成が可能です。ECUの統合という観点では、こうした機能はますます重要になります。そこで、普及の進む仮想ECUには実績のある組み込みのリアルタイム技術を採用し、組み込みの仮想アプリケーションの間で厳格な隔離状態を確保する必要があります。

 

自動車の機能安全にシリコンレベルからフォーカス

Cortex-R52+は、Arm Safety Readyポートフォリオの構成要素であり、ヘテロジニアスなSoC内に統合された安全地帯のニーズに最適な製品として、ADASやコックピット・コントローラなど、多くの用途で使用されます。本IPは、単一クラスター内で最大4ペアのロックステップCPUを構成して、自動車の機能安全における最高レベルの完全性を確保することも、より高い演算性能が求められる環境を対象に8個のCPUに分割することも可能です。

Cortex-R52+は、以下の3つの特長を基盤としています。

  • ソフトウェアの分離:ハードウェアのサポートによってソフトウェアを分離することで、開発者はソフトウェア機能の相互干渉を排除しやすくなります。安全関連のタスクの場合、認証作業に必要なコードが少なくてすみ、時間、コスト、労力を軽減できます。
  • マルチOSのサポート:仮想化機能により、開発者は単一のCPU上で複数のOSを使用して、各種アプリケーションを統合できます。これにより、電子制御ユニットの数を増やすことなく機能性を容易に拡充できます。
  • リアルタイム性能:Cortex-R52+ CPUの高性能マルチコア・クラスターにより、Cortex-Rのレイテンシーを最小限に抑えつつ、決定論的なシステムでリアルタイムの応答を実現できます。

Cortex-R52と同様、Cortex-R52+は、独自評価に基づき、「ISO 26262」の最高レベルのASIL Dのほか、システマティックな障害を回避し、ランダムなハードウェア障害に対応するための「IEC 61508 SIL 3」の認証を取得する見通しです。

 

自動車メーカーに安全でセキュアな確固たる基盤を提供

安全性を構築する上で確固たる基盤が必要というのは、自動車設計分野におけるArmの中核的な理念ですが、Cortex-R52+の導入を通じて、タイムクリティカルなアプリケーションの安全性、柔軟性、リアルタイム性能の機能が強化されることで、こうした基盤が、より強固なものとなります。

ソフトシリコンのIPのみならず、ソフトウェア・テスト・ライブラリ(STL)などの安全パッケージとソフトウェア、機能安全ランタイム・システム(FuSa RTS)、Arm Compiler for Functional Safetyなどの開発ツールなど、さまざまな分野でArmのSafety Readyポートフォリオは発展し続けています。このポートフォリオは、ハードウェア製品の開発に寄与するだけではありません。これらのソリューションは、ソフトウェアの開発・検証作業を顕著に迅速化しつつ、安全性・信頼性に優れた各種システムの導入プロセスを短縮できます。

これまで以上に高度で機能安全、セキュリティ、コスト効果に優れたソリューションを、設計者や開発者がより迅速・効率的に提供できる環境を実現することは、より安全な運転の世界を目指す私たちのチャレンジです。モビリティの長い歴史の中でも、これは最高に魅力的な挑戦であり、Armはその達成に向け貢献していきます。

製品の詳細情報については、Arm Cortex-R52+のウェブページ(英文)をご参照ください。

 

Armについて
Armのテクノロジーは、コンピューティングとデータによる革命の中心として、人々の暮らしや企業経営のあり方に変革を及ぼしています。そのエネルギー効率に優れたプロセッサ設計とソフトウェアプラットフォームは、1,800億個以上のチップを通じて高度なコンピューティングを実現してきました。Armのテクノロジーは各種センサーからスマートフォン、スーパーコンピュータまで、あらゆる製品をセキュアにサポートしており、世界人口の70%以上に使用されています。Armは現在1,000社以上のパートナーとともに、チップからクラウドまで、AI駆動のコネクテッド社会の中核となるコンピューティングのあらゆる分野において、設計、セキュリティ、管理を支えるテクノロジーの最先端を担っています。

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Armについて

Armのテクノロジーは、未来のコンピューティングを築く存在です。そのエネルギー効率に優れたプロセッサ設計とソフトウェアプラットフォームは、2,800億個以上のチップを通じて高度なコンピューティングを実現し、センサーからスマートフォン、スーパーコンピュータまで、あらゆる製品をセキュアにサポートしています。1,000社以上のパートナーとともに、チップからクラウドまで、あらゆる場所でAIを活用できるようにし、またサイバーセキュリティの分野では、デジタル世界における信頼の基盤を提供しています。Armは、これからの未来を築く根幹を支えていきます。

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