次世代の性能を実現するチップレット市場
Armは、標準化の経験と多様性に富んだエコシステムの中心に位置付けるその役割を活かして、SoC設計者の未来に向けたイノベーションを支援しています。チップレットを使用することで、プロセスノードをサブシステム向けに最適化することができ、高価なプロセスノードを使用せずに済みます。イノベーターはすでにこのアプローチを受け入れ、活気に満ちたチップレット市場が現実のものになりつつあり、コスト削減に役立つカスタムシリコンへの柔軟な道が開かれることで、既存のコンポーネントをカスタムチップのビルディングブロックとして活用できるようになります。
多様性に富んだエコシステムの中心に位置付けているArmは、ツールや標準化の取り組みを推進することで、相互運用性と性能の確約を支援すると同時に、複雑さの軽減と市場投入までの時間短縮を可能にしています。
Armの独自性は、そのプラットフォーム製品またはパートナーを通じて、より大規模なシステムに組み込まれる複数の再利用可能なIPコンポーネントで真の柔軟性を提供している点にあります。つまり、チップレットエコシステムは現在すでに実現されており、Armは、さらに将来に向けてリッチなマルチベンダーチップレットエコシステムを構築しています。
ArmはすでにシステムアーキテクチャやAMBAなどの業界標準に積極的に投資しており、これによりシステムレベルの機能のさらなる定義を進め、チップレット市場の拡大とArmを基盤とした発展を促進しています。Armには、これまでも柔軟性とコンポーザビリティを基盤としてきた歴史があり、チップレットはその日常業務の延長にあるため、まさにArmに最適な役割と言えます。
課題
相互運用性の達成
「ドラッグ&ドロップ」で構成可能なエコシステムには、異なる規格、互換性、テスト、検証のボトルネック、さらには拡張性と将来の保証に起因する大きな技術的障壁があります。
コストバランスの仮説
チップレットの統合には、革新性とコストのバランスを取るという特有の課題があります。何かのコストを削減すれば、別の何かのコストが必然的に上昇します。製造/設計コスト、NREコスト、ユニットコスト、パッケージコストの間には、トレードオフの関係があります。
セキュリティ
チップレットテクノロジーは、かつてないイノベーションの機会をもたらす一方で、セキュリティの新たな課題ももたらします。チップレットベースのシステムに対する信頼を築き、半導体技術の動的な環境における新たな脅威から保護するためには、これらの潜在的な攻撃ベクトルに対する慎重な検討と積極的なセキュリティ対策が不可欠となります。
一時の盛り上がりと断片化防止
チップレット設計の課題は、バランスを取ったアプローチの必要性を際立たせており、業界は一時の盛り上がりによる意図しない断片化を防ぐため、慎重に行動する必要があります。モノリシックシステムの成功例を巧みに再利用し、標準化を優先させ、エコシステムコラボレーションを促進することは、チップレット技術をより広範な半導体環境にうまく統合する上で極めて重要な役割を果たします。
さらなる複雑化と限られた設計自由度
さらなる複雑化と限られた設計自由度というチップレットの世界における課題は、この技術的な変化の繊細な性質を浮き彫りにしています。標準化とイノベーションの必要性のバランスを取ることは、成功するチップレット設計の核心にあり、最新の半導体アーキテクチャにおける複雑な環境をナビゲートするための戦略的かつコラボレーティブなアプローチが必要となります。
Armのアプローチ
Armは、主にモノリシックな市場と並行した、パートナーによる初期のチップレット設計の実験を可能にします。
これは複数のダイにわたるマルチベンダーシステムを可能にします(カスタムエンゲージメントおよびインターフェイス)。
標準化によって再利用が可能になることで、本来意図されていなかったシステムにチップレットを使用できるようになります。
Armのビジョンは、コンポーザブルで再利用可能なソリューション(PCBレベルの統合など)を完備した「Armベースのオープンなチップレット市場」です。
標準化によりチップレットエコシステムが加速
このテクノロジーがもたらす機会を真に活かすためには、この第3段階に到達することが極めて重要となります。しかしながら、標準化に向けた有意義かつ集中的なコラボレーションと投資なくして、これを実現することはできません。前述の取り組みにより、再利用可能なチップレットに向けた数年を要するプロセスの開始に伴い、エコシステムが早期に実現されます。
Armはすでにチップレットエコシステムの基盤となるIPコンピューティングソリューションを提供していますが、断片化を避けるためには、業界が一丸となってシステムレベルの機能を定義する必要がある。
チップレットシステムアーキテクチャ
Armエコシステム内でチップレットタイプとパーティショニングの選択を標準化するためのArmイニシアチブ
Armは、パートナーと協力し、完全なチップレットに至るまで、複数のサプライヤー間でコンポーネント(物理設計IP、ソフトIPなど)の再利用を増やすことを最終的な目標として、チップレットベースのシステムにおける最適なパーティショニングの選択肢を分析し、定義しています。
Armは、モバイルから自動車、インフラストラクチャまで、複数の市場セグメントから15社を超えるパートナーで構成される作業部会を結成し、すでに初期の成果物について評価を行っており、この分野における考え方の進化を促進しています。
AMBA
チップレット市場の実現に向けた既存の確立された規格の進化
AMBAは約30年にわたって、オープンな業界標準の基盤であり続けてきました。AXIやCHIなどのAMBA仕様は、数十億台のデバイスで使用されています。
Armは、成功を収めている既存のオンチッププロトコルを活用した、AMBA CHIおよびAMBA AXIのチップ間バージョンに取り組んでいます。
Armベースのチップレット構築
チップレットが大量市場に普及するには何年もかかると思われる一方で、Armプラットフォームの柔軟性が今日の新興チップレット市場を可能にしています。これは、パートナーが必要とする柔軟性を備えたカスタムシリコンソリューションの迅速な構築を可能にするという、Armの伝統に基づいた自然な流れです。Armは、複雑さを増す環境の中で、業界が求めるコンピューティング、性能効率、ソフトウェアソリューションを提供し続けています。Armのソリューションと標準規格は、今日すでに高性能なインフラストラクチャアプリケーションにおいて現実のものとして導入されており、自動車市場もすぐにこれに追随することとなります。Armはすでに、Armを基盤として構築された、勢いのある多様性に富んだチップレットエコシステムを実現しています。
Arm Total Design
Arm Total Designは、Neoverse CSSをベースとしたカスタムSoCの円滑な実現に取り組んでいるエコシステムです。業界リーダーが一丸となり、Armベースのチップレットを含む、Neoverse CSSベースシステムの開発の加速・簡素化に向けて協力し、チップレット市場への道のりを推進しています。
- ルネサス、Armを基盤とした高度なパッケージ内チップレット統合技術を採用した車載用SoCおよびMCUのプロセッサーロードマップを発表。
- MediaTekとNVIDIAが共同で、チップレット技術を使用して自動車を変革。
- AWS、チップレット技術を基盤として構築された、最も強力でエネルギー効率に優れたAWSプロセッサー、AWS Graviton4を発表。
- ソシオネクスト、TSMCの2nmシリコンテクノロジーで消費電力を最適化した革新的な32コアCPUチップレットの開発を目標とする、TSMCおよびArmとのコラボレーションを発表。
新たなトレンド
テクノロジーエコシステムとして、未来のコンピューティングニーズにいち早く備え、必要となるIPとソリューションを、それらが必要とされるずっと前に、業界と協力して生み出す必要があります。
Armが継続している技術トレンドシリーズでは、各新興テクノロジーによってもたらされる機会と課題に焦点を当て、準備を整える方法についてガイダンスを提供しています。