Arm Zena CSSが、自動車メーカーによるAIデファインド・ビークルの市場投入を1年早期化

June 04, 2025

発表の概要:

  • Armは、自動車メーカーによる新型車両モデルの市場投入を、従来のタイムラインよりも少なくとも1年早めることを可能に
  • Zena CSSはソフトウェアおよびシリコンの開発を加速し、AI機能のより迅速かつ効率的な提供を実現
  • 事前検証済みで安全性に対応したプラットフォームにより、必要とされるエンジニアリング・リソースを推定20%低減でき、開発コストと複雑性を軽減
  • 今後数年以内に、大半のOEMがZena CSS製品ファミリーを開発の基盤として活用する見通し

英Arm(本社:英国ケンブリッジ、日本法人:神奈川県横浜市、以下Arm)は本日、自動車メーカーによる新型車両モデルの市場投入を従来よりも少なくとも1年早めることを可能にする、標準化された事前統合型の演算プラットフォームであるArm Zena Compute Subsystems(CSS)を発表しました。Zena CSSは、開発サイクルを大幅に短縮し、シリコンがまだ存在しない段階からソフトウェアチームが開発を開始できる環境を提供します。

イノベーションをより早くドライバーに届けることは、自動車メーカーが今日直面する最大の課題の一つです。従来のシリコン開発期間は車両の市場投入を遅らせる要因となり、ドライバーが期待するAI機能の提供を妨げてきました。Zena CSSは、製品の市場投入までの期間を短縮し、AI機能を複数の車種ラインにわたって拡張可能にするとともに、AIデファインド・ビークル時代において自動車メーカーが競争力を維持することを支援します。

Armのシニア・バイスプレジデント兼オートモーティブ事業部門ジェネラルマネージャーであるディプティ・ヴァチャーニ(Dipti Vachani)は、次のように述べています。「現在、Tesla、Rivian、NIO、Mercedes-Benz、Honda、Geelyをはじめ、世界中のほぼすべてのOEMが、Armテクノロジーをコンピューティング基盤として採用し、安全性が求められるADASから没入型のキャビン内体験まで、さまざまな機能を支えています。次世代の自動車では、車両全体にわたってリアルタイムで適応・更新される、浸透型かつパーソナライズされたインテリジェンスが求められるようになります」。

あらゆる車種でAIデファインドな体験を加速

AI時代における競争力を確保するには、安全性、電力効率、柔軟性を犠牲にすることなくスケーラブルなコンピューティング環境が不可欠です。Zena CSSは、チップの開発期間を最大12カ月短縮し、プロジェクトあたり最大20%のシリコン設計工数を削減することで、新たな車両モデルをより早く市場に投入できるよう自動車メーカーや半導体メーカーを支援します。これにより、インテリジェントな音声・タッチインターフェース、没入型のデジタルコックピット体験、運転支援と自動化、リアルタイムの状況認識といった機能の実装が加速されます。

Arm Zena CSSの概要

次世代の自動車には、先進運転者支援システム(ADAS)、車載インフォテイメント(IVI)、車両制御システムといった多様なワークロードを、それぞれ異なる安全要件やリアルタイム性の制約のもとで、単一のプラットフォーム上で実行できる環境が求められます。Zena CSSは、Armv9ベースのAutomotive Enhanced(AE)テクノロジーを基盤とし、AIデファインド・ビークル向けにArmが初めて提供する、事前統合・事前検証済みのプラットフォームです。本プラットフォームは、次の要素を提供します。

  • ADASおよびIVIアプリケーション向けにパフォーマンスを最適化した、16個のArmv9ベースCortex-A720AEコア
  • 故障管理、安全監視、システム制御、SoCブートなどのリアルタイムなASIL D処理に対応する、Zena CSS 専用のCortex-R82AE 搭載 Safety Island
  • Arm TrustZoneテクノロジーを活用し、SoCレベルのセキュリティを管理する、安全対応のハードウェア・ルート・オブ・トラスト(RoT)を備えたランタイム・セキュリティ・エンジン
  • CMN S3AEによって実現される、CPUコヒーレンシーおよびチップ間コネクティビティ
  • サラウンドビューやドライバー監視などのADASユースケースに対応する、Mali-C720AEおよびMali GPUによるオプションの画像信号処理機能
  • 高度なAI対応SoC設計における進化するワークロード要求に応える、アクセラレーターおよびパートナー独自ロジックの容易な統合サポート

この標準化された演算プラットフォームにより、自動車メーカーおよび半導体メーカーは、アーキテクチャやソフトウェアの再利用が可能となり、グローバル市場への車両提供を加速しながら、システム開発と統合の簡素化を実現できます。同時に、機能安全およびセキュリティ認証の効率化にも貢献します。背景として、車両モデルや用途ごとに個別のハードウェアおよびソフトウェア・スタックを開発するのは、コストがかかるうえ、時間と検証・認証の負担も非常に大きいことが挙げられます。Zena CSSは、標準プラットフォームの上でArmのパートナーがイノベーションと差別化を実現できる環境を提供し、製品ラインに固有の価値を加える領域での開発を可能にします。

すでに、大手EVメーカーを含む主要な自動車メーカーや半導体メーカーが、Zena CSSのライセンス契約を締結、あるいは協議の最終段階に入っています。今後数年のうちに、業界の大半がZena CSS製品ファミリーを基盤とした開発に移行していくと見込まれています。

開発初日からイノベーションを可能に

Zena CSSは、シリコンの市場投入期間を短縮するだけでなく、Armのパートナーは、AWS、CadenceSiemensSynopsysによるクラウドベースの仮想プラットフォームのサポートを活用することで、ソフトウェアの開発をすぐに開始できます。これにより、ソフトウェア・イノベーションの市場投入期間を最大2年短縮することが可能になります。

デンソー、GitHub、Green Hills、Mapbox、Red Hat、パナソニック オートモーティブを含む、2,000万人以上の開発者から成るArmの開発者エコシステムは、共通の演算プラットフォーム上で、ソフトウェアスタック全体の構築とテストを行うことができます。Zena CSSは、Autosar、COVESA、eSync、Virtioといったオープンスタンダードを基盤としており、SOAFEEにも準拠しています。SOAFEEには、General Motors、CARIAD、Continental、Tata Motorsをはじめとする150社以上が参加しています。


Arm Zena CSS Infographic


Armが切り拓くAIデファインド・ビークルの時代

過去5年間で、自動車市場向けに出荷されたArmベースのチップ数は3倍に増加しており、Armプラットフォームに対する業界からの信頼の証と言えます。今回のZena CSSにより、Armは自動車メーカーに対し、ソフトウェア定義かつAI対応の車両を、より迅速に、よりスマートに、より効率的に構築するためのツールを提供します。さらに、クラウドと車両間で同じArmアーキテクチャを用いて開発・テストが行える「クラウドから車までのパリティ」という独自の優位性が加わることで、Armのパートナーは、最小のセンサーからArmベースのクラウドに至るまで、ソフトウェアがシームレスに動作するという確信を持つことができます。

チップ開発期間を最大12カ月短縮し、エンジニアリング負荷を軽減するとともに、ソフトウェア・イノベーションの早期着手を可能にすることで、Arm Zena CSSは、自動車メーカーがAIデファインドな体験を、少なくとも1モデルイヤー早く提供できるよう支援します。そして、すべてはArm上で実現されます。


パートナーからの賛同コメント:

「Astemoは、SOAFEEの活動を通じてArm社と連携しつつ、IoV(Internet of Vehicles)プラットフォームの構築を進めています。当社のIoVプラットフォームが、Arm Zena Compute Subsystems(CSS)にも対応することで、効率的な仮想プロトタイピング環境の構築が可能となり、Software-Defined Vehicleの高速開発に更に貢献できることを期待しています。」

— Astemo株式会社(旧 日立Astemo) エグゼクティヴヴァイスプレジデント CTO兼CISO兼技術開発統括本部長 相田 圭一 氏


「BMW Groupでは、将来の車載コンピューティング・アーキテクチャに向けた革新的なアプローチを常に模索しています。現在は、自動運転機能などにおける高度な組込み機械学習アプリケーション向けに、ハードウェアとソフトウェアの協調設計に注力するとともに、オープンな車載チップレット・エコシステムに向けた将来のチップレット・リファレンス・アーキテクチャの定義にも取り組んでいます。Arm Zena Compute Subsystems(CSS)は、当社の半導体シミュレーション作業における優れた出発点となります。Armのアーキテクチャはすでに自動車エコシステム全体に深く浸透しており、imecのAutomotive Chiplet Programのような取り組みにおけるArmの支援と協力を、私たちは心から歓迎し、感謝しています。」

— BMW Group 新技術担当バイスプレジデント Dr. Martin Tietze


「ソフトウェア定義型自動車への移行に伴い、私たちの演算アーキテクチャへのアプローチも転換が求められています。Arm Zena CSSのような、標準化され、事前検証済みのコンピュートサブシステムは、開発期間を大幅に短縮し、業界全体で複雑性を軽減できます。こうしたソリューションを開発チェーンの早期段階で統合することで、自動車業界は複雑性を合理化しつつ、より強固な基盤を確立することで、次世代自動車を決定づける安全かつインテリジェントなネットワーク体験を提供できます。私たちMercedes-Benzは、エコシステム全体を前進させる協調的なプラットフォームの価値を認識しています。」
— Mercedes-Benz AG 最高ソフトウェア責任者 Magnus Östberg氏


「私たちパナソニック オートモーティブシステムズは、ソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)の開発の迅速化に取り組んでおり、Arm Zena Compute Subsystemsは、こうした変革の重要な一歩です。現在も継続中の当社とArmとのコラボレーションや、SOAFEEコミュニティ内での取り組みなどに基づき、私たちは、標準的なデバイス仮想化フレームワークのVirtIOをベースとした当社のSOAFEE Blueprints(Unified HMIやvSkipGenなど)を、Arm Zena CSSの実現する標準化されたスケーラブルなプラットフォームに移植することに大きな価値があると考えています。共通の演算基盤上での仮想プロトタイピングは、市場投入期間を短縮するだけでなく、よりソフトウェア中心で柔軟な自動車エコシステムという私たちのビジョンにも合致しています。業界全体に浸透しているArmの存在により、両社の協力関係を深めつつ、車載コンピューティングの未来の形成に寄与できることは大きな喜びです。」
— パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 代表取締役 副社⻑執⾏役員 CTO ⽔⼭ 正重 氏


「TelechipsはArmの長期的なパートナーであり、今回の継続的なコラボレーションは、開発期間を短縮しつつ、高性能かつコスト効率に優れた半導体ソリューションをグローバルな自動車市場に提供するという私たちのミッションの鍵となるものです。Arm Zena Compute Subsystems(CSS)のもたらす標準化されたスケーラブルな演算プラットフォームによって、当社は開発を迅速化し、独自のイノベーション領域に専念できます。ソフトウェア定義型自動車の要求や、主要なOEMおよびティア1サプライヤーの期待に沿う、競争力に優れた将来対応のソリューションをより迅速に市場投入する上でArm Zena CSSは役立ちます。」
— Telechips Inc. CEO Jang-kyu Lee氏

Armについて

Armは、業界最高の性能と電力効率に優れたコンピューティング・プラットフォームであり、コネクテッドな世界における人口の100%に貢献する比類のないスケールを備えています。Armは、演算に対する飽くなき需要に応えるため、世界をリードするテクノロジー企業に先進的なソリューションを提供し、各社がAIによるかつてない体験や能力を解き放つことができるよう支援しています。世界最大のコンピューティング・エコシステムと2,200万人のソフトウェア開発者とともに、私たちはArm上で築くAIの未来を形作っていきます。

全ての情報は現状のまま提供されており、内容について表明および保証を行うものではありません。本資料は、内容を改変せず、出典を明記した上で自由に共有いただけます。ArmはArm Limited(またはその子会社や関連会社)の登録商標です。その他のブランドあるいは製品名は全て、それぞれの権利者の所有物です。©1995-2025 Arm Limited.