モバイルシステム設計
モバイルコンピューティング市場には、スマートフォン、ラップトップ、ウェアラブル、エクステンデッドリアリティ(XR)などのデバイスが含まれています。Arm Cortex-Aプロセッサーの高度な製品群がこれらのデバイスに搭載されており、各プロセッサーの基盤としてArm Aプロファイルアーキテクチャが採用されています。このモバイルコンピューティング市場向けArmシステムアーキテクチャ仕様の概要では、以下の3つの主要分野に焦点を当てます。
SoC設計向けシステムアーキテクチャ
SoCの実装を成功させるには、統合とシステムアーキテクチャに注意する必要があります。Armは、インターコネクト規格、セキュリティ実装、電力制御の統合などを含む主要分野において、SoC標準化とシステムアーキテクチャを提供します。
Aプロファイル向けプラットフォームセキュリティガイド
Aプロファイル向けプラットフォームセキュリティガイド(PSG-A)は、業界標準および仕様に準拠した、信頼できるSoCインフラストラクチャの要件と実装のガイダンスを提供します。
PSG-A仕様は以下をカバーしています。
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セキュアワールドの分離
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セキュリティ実装要件
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ライフサイクル管理
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デバッグ、ペリフェラル、メモリに関する考慮事項
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要件チェックリスト
電力制御システムアーキテクチャ
SoC向け電力制御システムアーキテクチャ(PCSA)は、Armコンポーネントをベースとしています。SoCアーキテクト、設計者、コンポーネント設計者はこの仕様を使用して、クロックおよび電力制御のためのArm低消費電力インターフェイスを組み込みます。
PCSA仕様は以下の通りです。
- 電圧、電力、クロックのパーティショニングと依存関係
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電源状態およびモード
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Arm電力制御フレームワークおよび統合の原則
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Armコンポーネント別電力およびクロックの統合
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AMBA Low Power QチャネルおよびPチャネルインターフェイスを使用したIP設計
PCSA仕様(DEN0050)は、Armにご連絡の上、ドキュメント番号:DEN0050を引用することで、NDAを通じてご利用いただけます。
Advanced Microcontroller Bus Architecture(AMBA)は、SoC内の機能ブロックを接続・管理するためのオープン標準です。AMBAプロトコルおよびインターフェイスは、モバイルコンピューティングで広く使用されています。
AMBAは、設計の再利用と摩擦の少ないSoC統合を可能にします。またSoC設計者は、サードパーティ製IP製品、ツール、サービスの包括的なマーケットプレイスにアクセスでき、リスクと所有コストの削減、市場投入までの時間短縮に役立てることができます。
ソフトウェア規格
ソフトウェア規格の使用と、OSや標準ファームウェアベンダーによるその採用により、共通のインターフェイスが提供されます。これにより統合が容易になり、実装ごとの所有コストを削減することができます。
セキュアモニターコール呼び出し規約
セキュアモニターコール呼び出し規約(SMCCC)仕様は、Armv7およびArmv8アーキテクチャの両方で、SMC(セキュアモニターコール)およびHVC(ハイパーバイザコール)命令で使用する共通の呼び出しメカニズムを定義しています。
SMCCC仕様は、以下を含むソフトウェアレイヤ間の統合を容易にし、断片化を減らすことを目的としています。
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オペレーティングシステム(OS)
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ハイパーバイザ
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セキュアモニター
Power State Coordination Interface(PSCI)
Power State Coordination Interface(PSCI)は、OSベンダーがArm上において異なる権限レベルで動作する監視ソフトウェアに使用できる、電源管理用の標準インターフェイスです。この規格により、異なるベンダーが提供する監視ソフトウェアの統合が容易になります。
PSCI仕様では、以下のインターフェイスを定義しています。
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コアアイドル管理
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コアの動的な追加と削除、セカンダリコアの起動
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システムのシャットダウンとリセット
PSCIはSCMI上で層になり、Flattened Device Tree(FDT)やAdvanced Configuration and Power Interface(ACPI)などのハードウェア検出テクノロジーと連携して機能します。
System Control and Management Interface
System Control and Management Interface(SCMI)は、OSとシステム制御プロセッサー(SCP)間の標準インターフェイスです。SCMIは拡張性があり、ファームウェアに実装されることが多い機能にアクセスするためのプロトコルを提供します。
現在、SCMI仕様では以下のプロトコルが提供されています。
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サポートされるインターフェイスの検出
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パワードメイン管理
- 性能管理
- クロック管理
- センサー管理
- リセット管理
- 電圧ドメイン管理
- パワーキャッピングおよびモニタリング
ホワイトペーパーをダウンロード: Arm SCMI仕様を使用した電力と性能の管理
セキュリティ
Arm TrustZoneテクノロジーを基盤とする、当社のセキュリティドキュメントは、Platform Security Architecture(PSA)プログラムの一部であり、Trusted Execution Environment(TEE)の基礎を提供します。
Platform Security Boot Guide
Platform Security Boot Guide(BOOT-PSG)仕様は、ファームウェアの起動と更新に関するシステムおよびファームウェアの技術要件を提供します。
Firmware Framework for Aプロファイルアーキテクチャ
Firmware Framework for A(FF-A)仕様は、ベンダーのエコシステムからセキュリティサービスを分離するための標準プログラミングモデルを定義しています。また、これらのサービスとそのクライアント間における通信用の標準インターフェイスも記述しています。このインターフェイスは、以下のためのメカニズムを提供します。
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利用可能なサービスの検出。
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リッチOS実行環境(REE)からTrusted Execution Environment(TEE)サービスにアクセスするための同期メッセージパッシング(例:SMC呼び出し、前述の「セキュアモニターコール呼び出し規約」を参照)。
- 非同期メッセージパッシング(例:TEEからREEへのDoorbell通知)。
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メモリの共有(例:REEとTEE間のゼロコピーセマンティクスによるメッセージ交換)。
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メモリのランタイム保護(例:保護されたコンテンツを再生するためのセキュアなビデオパスの確立)。
Trusted Firmware-A(TF-A)は、Arm Aプロファイルアーキテクチャ用セキュアワールドソフトウェアのオープンソースリファレンス実装です。
TF-Aは、以下を含むArmインターフェイス規格を実装します。
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Power State Coordination Interface(PSCI)
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Trusted Board Boot Requirements for Client(TBBR-CLIENT)
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SMC呼び出し規約(SMCCC)
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System Control and Management Interface(SCMI)
- Software Delegated Exception Interface(SDEI)
このコードは、Armアーキテクチャに基づいたハードウェアプラットフォームおよびソフトウェアモデル間で移植と再利用が可能です。