Arm、Open Compute Project(OCP)の理事会メンバーに就任、オープンな統合型AIデータセンター基準の確立を推進

October 22, 2025

発表の概要

  • OCPは、ArmおよびAMDとNVIDIAを理事会メンバーに任命することで、コンバージド(統合型)AIデータセンターのオープンスタンダード策定における主導的な役割を強調
  • Armはベンダー中立の「Foundation Chiplet System Architecture(FCSA)」仕様をOCPにコントリビューションすることで、演算スタック全体のイノベーションを加速
  • Arm Total Designのエコシステムは、AIイノベーション向けのチップレット供給網を強化する新機能を追加、2023年の発足以降3倍に拡大

※本資料は英Armが2025年10月14日に公開したニュースの抄訳です。


英Arm(本社:英国ケンブリッジ、日本法人:神奈川県横浜市、以下Arm)は、AMDおよびNVIDIAのリーダーとともに、OCPの理事会メンバーに任命されたことを発表しました。この任命は、AIデータセンターの未来を形作るオープン性と業界標準の推進におけるArm独自の能力を示すものです。ArmはOCP理事会の一員として、Meta、Google、Intel、Microsoftなどのコンピューティング業界で影響力を持つ重要企業とともに、AIデータセンター向けのオープンかつ相互運用可能な設計の推進に取り組んでまいります。

Armのシニア・バイスプレジデント兼インフラストラクチャストラクチャ事業部門ジェネラル・マネージャーのモハメド・アワッド(Mohamed Awad)は、次のように述べています。「AIエコノミーによって、演算インフラストラクチャの再構築が進む中、クラウドからエッジまで前例のないパフォーマンス、効率性、規模が求められています。データセンターは過去最大の変革期を迎えており、コモディティサーバーからAI特化型のラックレベル・システムや大規模クラスターへと移行しています。その一方で、私たちは消費電力という非常に大きな課題に直面しています。2025年現在のAIラックが消費する電力量は、1台で米国の約1,000世帯分に相当し、その演算能力は2020年の最上級スーパーコンピューターに匹敵します。この課題を解決するには、次期フェーズのインフラストラクチャが不可欠であり、急速に進化するエコシステム全体でのオープンなコラボレーションが極めて重要です」

Armは、コンバージドAIデータセンターを次期フェーズのインフラストラクチャと考えており、単位面積あたりのAI演算能力を最大限に高めることで、AIの駆動に伴う消費電力と関連コストを削減します。このようなインフラストラクチャを構築するには、演算、アクセラレーション、メモリ、ストレージ、ネットワーキングなど、各分野の共同設計機能が必要です。Arm® Neoverse™は現在、AIスタックの各層の中核技術を担っており、これによって最先端のAIプロバイダーは、データのトークン化、トークンによる高度なAIモデルとエージェントの実行、科学・医療・商業分野のアプリケーションを通じたAIのもたらす実際の効果を最適化することができます。

継続的な取り組みがArmベースという現状の中、今回の任命は、極小センサーから最高性能のデータセンターに至るまで、あらゆるデバイスに搭載されている最も普及した演算プラットフォームであるArmが、これまでの学びを共有する絶好の機会となっています。電力需要が急速に拡大する中、効率性の分野でリーダーシップを発揮しつつ、コンピューティング・エコシステムで中心的な役割を担うArmの存在は、AIインフラストラクチャへの投資をより持続可能で影響力のあるものにする上で鍵となるでしょう。

AI向けシリコン・サプライチェーンの拡張

コンバージドAIデータセンターは、個々のコモディティチップでは駆動できません。こうしたシステムの密度を高めるには、高度な専用設計シリコンが必要です。チップレットは、パッケージ内の統合と2.5D/3D技術を通じた道筋を提供しつつ、マルチベンダーによる重要機能の共同設計という新たな機会を切り開きます。Armは本日、OCPに「Foundation Chiplet System Architecture(FCSA)」仕様をコントリビュートすることで、チップレット関連業界のコラボレーションを深める方針も発表しました。



このFCSAは、Arm Chiplet System Architecture(CSA)の継続的な取り組みを活用しつつ、ベンダーやCPUアーキテクチャに中立の要件に適合したフレームワークに対する業界の需要に応えるものです。FCSAは、チップレットシステムとインターフェース定義のための共通の標準規格セットを提供することで、CPUアーキテクチャに関係なく、大規模な再利用と相互運用性を実現しつつ、チップレットの設計と統合を加速させます。

FCSAのコントリビューションは、2023年発足以降のArm Total Designエコシステムの進歩を証明するものです。この期間、パートナー各社はArm CSAに準拠した初のチップレットの市場投入に着手しており、その後も多くのプロジェクトが開発中で、オープンなチップレット規格の次期フェーズに向けた基盤が築かれています。これまでの成功を基礎とし、10社の新規パートナー(Alchip、ASE、Astera Labs、CoAsia、Credo、Eliyan、Insyde Software、Marvell、Rebellion、VIA NEXT)を迎え入れることで、ArmはArm Total Designエコシステムを拡大しています。高度なパッケージング、相互接続、システムインテグレーションの分野で各社の専門知識がひとつになることで、次期フェーズの標準規格と仕様の策定作業を推進していきます。これにより、IPやEDAツールから製造、パッケージング、妥当性確認までのシリコン設計ライフサイクル全体でチップレットのイノベーションが加速します。

コンバージドAIデータセンターへの道筋を描く

Armはすでに、ファームウェア、管理能力、サーバーのハードウェア設計に関するOCPのワークストリームで活動しています。その一環としてArmは今週、OCP Networking Projectが主導する、大規模AI向けのEthernet技術を進化させる共同プロジェクト「ESUN」に参加しました。Armは現在、ミリワットからデータセンターのギガワットまでのあらゆる導入環境を対象とした、AIの効率的なスケーリングに関する問題解決に取り組んでいます。OCP理事会への参加やOCPへのFCSAのコントリビューションは始まりに過ぎません。

このたびの発表は、強力かつオープンで、誰もが利用可能なAI対応の基盤に向けたさらなる一歩です。オープンで共有された標準規格の価値は、データセンターの枠組みを超えて、システム全体の共同設計が不可欠な市場におけるイノベーションの原動力となります。

パートナー企業からの賛同コメント:

「当社のお客様はAIインフラストラクチャに対し、オープンかつ協調的なアプローチを採用しています。Arm Total Designエコシステムに参加し、当社の専用設計のシリコンとソフトウェアをOCPのFoundation Chiplet System Architectureのようなオープンスタンダードに適合させることで、パートナーは市場投入期間を短縮しつつ、より広帯域幅・低遅延のコネクティビティ解放し、システムからラック、その先までXPUをシームレスに拡張することができます」
– Astera Labs、技術/ソリューション・アーキテクチャ担当フェロー、Chris Petersen氏


「市場投入期間を短縮し、エンジニアリングの労力を軽減しつつ、前例のない複雑な設計の中で効率的なスケーリングを実現するため、業界ではチップレットベースのアーキテクチャの採用が加速しています。当社のシリコン実証済みのPhysical AI System ChipletやCadence Chiplet Frameworkからも明らかな通り、Cadenceには、EDAやIPに加えて、CSAの仕様とチップレットに関してもArmとの長期的なコラボレーションの歴史が存在します。共通のオープンスタンダードを軸としてチップレットアーキテクチャの統合に向けた大きな一歩となる、ArmのOCPへのコントリビューションを当社は全面的に支持します。チップレットベースの設計とオープンなチップレット市場への移行を推進し続けることで、当社は新設のFoundation Chiplet System Architectureの進化に尽力していきます」
– Cadence、コンピュートソリューショングループ、バイスプレジデント、David Glasco氏


「ArmのFoundation Chiplet System Architecture(FCSA)仕様のOCPへのコントリビューションをCiscoは歓迎します。今回のような共同イニシアチブは、AI時代における業界全体のイノベーションの加速に寄与します」
– Cisco Silicon One、エンジニアリング担当シニア・バイスプレジデント、Mohammad Issa氏


「AIインフラストラクチャの構築が前例のない速度で加速し続ける中、カスタムシリコン・ソリューションについては、データセンター全体で非常に大きな需要が見られます。MarvellはArmのFoundation Chiplet System Architectureをサポートするチップレットとカスタムソリューションの業界リーダーです。Arm Total Designの参加を通じて、高性能かつ効率的なXPUとXPUアタッチのアクセラレーテッド・コンピューティング・ソリューションを、必要とされるあらゆる場所で提供するという共通のビジョンに向けて前進していきます」
– Marvell、カスタムクラウドソリューション部門シニア・バイスプレジデント兼ジェネラル・マネージャー、Will Chu氏

Armについて

Armは、業界最高の性能と電力効率に優れたコンピューティング・プラットフォームであり、コネクテッドな世界における人口の100%に貢献する比類のないスケールを備えています。Armは、演算に対する飽くなき需要に応えるため、世界をリードするテクノロジー企業に先進的なソリューションを提供し、各社がAIによるかつてない体験や能力を解き放つことができるよう支援しています。世界最大のコンピューティング・エコシステムと2,200万人のソフトウェア開発者とともに、私たちはArm上で築くAIの未来を形作っていきます。

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