ArmとNVIDIAが実現する、自動車およびロボット向けインテリジェントソリューション

September 05, 2025

Arm Neoverse V3AEは、NVIDIA DRIVE AGX ThorおよびJetson Thorを支えるCPUとして、次世代自動車とロボットに必要なパフォーマンス、拡張性、安全性を提供します。

著:ディプティ・ヴァチャーニ、シニア・バイスプレジデント兼オートモーティブ事業部門ジェネラルマネージャー



インテリジェントマシンはさまざまな業界で急速に進化しています。自動車は、自動運転やAIを活用したインフォテインメント、車内体験のパーソナライズに対応したAIデファインド・プラットフォームへと進化しています。同時に、ロボットも新たなフェーズを迎えており、ヒューマノイドロボット、自律移動型ロボット(AMR)、スマート産業システムが、リアルタイムでの認識、推論、行動に対応すると予想されます。

インテリジェントマシンの可能性を引き出すには、安全性を優先しつつ、データセンタークラスのパフォーマンス、拡張性、効率性を兼ね備えた演算プラットフォームが必要です。NVIDIAはArm NeoverseをCPUの基盤として、NVIDIA DRIVE AGX ThorとJetson Thorによる最先端の演算プラットフォームを提供します。

NVIDIA DRIVE AGX Thorが自動車を変革

NVIDIA DRIVE AGX Thor 開発キットは現在プレオーダーを受け付け中で、出荷は今年の9月を予定しています。Arm Neoverse V3AE CPUをベースとするNVIDIA DRIVE AGX Thorは、自動運転に必要な複雑なワークロードを処理できるよう設計された、スケーラブルでエネルギー効率に優れたAI演算プラットフォームです。

このArmの演算プラットフォームは、決定論的なパフォーマンスとISO 26262に準拠した機能安全をNVIDIA DRIVE AGX Thorにもたらすことで、高度なAIワークロードのリアルタイムでの確実な動作を保証します。NVIDIA DRIVE AGX Thorは最大2,000TFLOPSのFP4性能を誇り、予測型の先進運転者支援システム(ADAS)、リアルタイム運転監視、自然言語操作などのワークロードは、単一プラットフォーム内で同時に実行可能です。

NVIDIA DRIVE AGX Thorの演算ファブリックのバックボーンであるArm Neoverse V3AE CPUは、NVIDIAのBlackwell GPUと専用のアクセラレーターと連携することで、自動車が継続的に学習・適応し、長期的に進化するAIデファインド・ビークルの時代に向けた信頼性と拡張性に優れた基盤を実現します。

現在は、ベンチトップユニット(SKU10)と車内(SKU12)の2種類の開発者キットが用意されています。これらはいずれも、ハードウェアとソフトウェアの開発期間を短縮できるよう設計されています。

NVIDIA Jetson Thorがロボットを進化

一方、NVIDIA Jetson Thorの発売により、ロボットとフィジカルAIの分野にも上記と同じArm Neoverse V3AEの基盤が導入されます。リアルタイムでマルチモデルのAIワークフロー向けに特別設計されたNVIDIA Jetson Thorにより、ロボットは、ヒューマノイドロボット、AMR、産業システムにとって不可欠な要件である認識、推論、行動への同時の対応が可能です。

Arm Neoverseが高いシングルスレッド性能と圧倒的なワットあたりパフォーマンス効率をロボット分野にもたらすことで、ヒューマノイドとAMRは、応答性を犠牲にすることなく複数のAIモデルを並列実行できます。

具体例を以下に紹介します。

  • ヒューマノイドロボット:NVIDIA Jetson Thorは、ヒューマノイドロボットに必要な高性能コンピューティング、低レイテンシ、リアルタイム推論を実現します。この場合、自然なやり取りには、視覚、言語、モーションプランニングなどの複数のモデルを並列実行する必要があります。

  • 産業オートメーション:工場や倉庫では、Jetson Thorは自律型機械やロボットアームを駆動し、効率性と安全性を向上させます。

  • ヘルスケアシステム:ローカルなセンサー・フュージョンと高度なAIにより、Jetson Thorは、患者のモニタリング、リハビリ、手術支援をサポートします。

一方、NVIDIA Blackwellとの組み合わせにより、Jetson Thorは最大2,000TFLOPSのFP4性能を実現しており、Jetson Orin比で性能は7.5倍、電力効率は3.5倍に向上しています。こうした機能により、Jetson Thorは、さまざまな業界でフィジカルAIを導入するための高汎用性プラットフォームとなっています。

3.1倍の高性能化を達成したCPUとともに、NVIDIA Jetson Thorは、前世代製品に比べてコア数が高く、より高いGPU性能を単一のプラットフォームに統合しており、高度なロボットのリアルタイム制御を支援します。

Arm Neoverse V3AEの役割

Arm Neoverse V3AEは、効率性と安全性を組み込みつつ、自動車とロボットの両方のワークロードにデータセンタークラスのパフォーマンスをもたらしており、本日の発表はこうしたメリットを裏付ける絶好の事例です。本製品は高いシングルスレッド性能と拡張性を兼ね備えており、複数の複雑なAIモデルを並列実行できます。セーフティクリティカルなリアルタイムタスク向けに、Neoverse V3AEは、最も厳格な車載グレード基準を満たせるよう設計されており、セーフティクリティカルな環境向けに決定性、隔離機能、信頼性をもたらします。

Armの誇る業界最高のワットあたりパフォーマンスにより、自動車の場合もエッジで動作するロボットの場合も、こうしたシステムは高度なAIワークロードを持続的に実行できます。こうした組み合わせにより、マシンは複数のセンサーのデータを統合し、生成AIを実行しつつ、応答性が極めて重要な環境で安全かつリアルタイムの意思決定に対応できます。

開発者向けのスケーラブルなエコシステム

いかなる演算プラットフォームであっても、その拡張性はエコシステムの充実度に大きく依存します。DRIVE AGX ThorとJetson Thorはいずれも、NVIDIAの高度なソフトウェアスタックを活用しており、Armの効率的な演算アーキテクチャ上でシームレスに実行されます。

  • 「ISO 26262」の認証取得、セキュアブート、AI/生成モデル向けのTensorRT最適化に対応する、自動車向けのNVIDIA DriveOS 7.0.3。

  • NVIDIA Isaac(ロボット)、Metropolis(視覚AI)、Holoscan(センサ処理)により、インテリジェントなロボットシステムの迅速な開発が可能です。

上記にArmの堅牢な開発ツールとエコシステムのサポートが加わることで、開発者は複雑性を軽減し、市場投入期間を短縮して、システム統合ではなくイノベーションに専念できます。

さまざまな業界でインテリジェントマシンの原動力に

NVIDIA DRIVE AGX Thor開発者キットの提供開始とNVIDIA Jetson AGX Thorの発売は、Armを中核とするインテリジェントマシンにとって、新たなフェーズの到来を告げるものです。自動車の場合、これはリアルタイムで適応し、安全性、効率性、ユーザー体験を向上させるAIデファインド・ビークルの実現を意味します。ロボットでは、ヒューマノイドロボット、自律型機械、産業システム向けに安全性に対応したインテリジェンスが提供されます。

Arm Neoverse V3AEは、スケーラブルで安全対応、エネルギー効率に優れたコンピューティングへの扉を開くもので、これによって大量の自動車や工場ロボットが、高度なAIワークロードをエッジで持続的に実行できます。

NVIDIAとの協力により、私たちは、あらゆる走行とあらゆるタスクの実行を支える、安全でスケーラブルなコンピューティングの基盤を構築していきます。

Armについて

Armは、業界最高の性能と電力効率に優れたコンピューティング・プラットフォームであり、コネクテッドな世界における人口の100%に貢献する比類のないスケールを備えています。Armは、演算に対する飽くなき需要に応えるため、世界をリードするテクノロジー企業に先進的なソリューションを提供し、各社がAIによるかつてない体験や能力を解き放つことができるよう支援しています。世界最大のコンピューティング・エコシステムと2,200万人のソフトウェア開発者とともに、私たちはArm上で築くAIの未来を形作っていきます。

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