よりスマートかつ迅速に:Arm Compute Subsystemsがチップ設計の未来を加速
プラットフォームファーストのチップ設計アプローチにより、Arm Compute Subsystems(CSS)は、クラウド、モバイル、オートモーティブ、エッジAIの分野で市場投入期間を短縮し、コストを削減し、将来対応のコンピューティングを提供します。
Armテクノロジーを用いた製品開発の経験のある方なら、すでにArm Compute Subsystems(CSS)の能力を活用されているかもしれません。
お手持ちのスマートフォンから人気アプリの実行サーバーまでを対象に、Arm CSSは以下のメリットを実現します。
- 市場投入期間の短縮
- パフォーマンスの最適化
- リスクの低減
Arm CSSとは単一の静的な製品ではなく、モバイル、インフラストラクチャ、オートモーティブなどの主要市場に特化した、Armの技術ポートフォリオを提供する最新の手段です。デザインウィンは16件以上で、複数のリピート注文を獲得するなど、その勢いは急速に加速しています。本ブログ記事では、Arm CSSの実際の機能とその重要性、業界別のイノベーション事例を掘り下げます。
AIによるすべての変革は、シリコンから始まる
クラウドのLLMからエッジ推論まで、AIによって、シリコンの理想的な設計方法は再定義されています。チップメーカー各社は現在、プロセスの複雑化や納期の短縮、そして、かつてないスピードでのイノベーションへの圧力に直面しています。
こうした状況を受け、私たちはArm CSSを発表しました。2023年初頭の最初のローンチ以降、Arm CSSを利用したパートナーは、最初のシリコン製造までの期間を最大12カ月短縮し、数千万ドル規模の非反復エンジニアリング(NRE)コストを節約して、エンジニアリング業務の中心を、これまでの統合作業から、真のイノベーションや差別化をもたらす作業へと移行させています。
最適化された演算とシステムのIPを、事前統合済みで各市場向けに調整されたサブシステムへと統合することで、Arm CSSは、設計サイクルを簡素化しつつ、クラス最高のパフォーマンスを実現します。パートナーがクラウド、エッジ、セーフティクリティカルなシステムのいずれを構築する場合でも、Arm CSSを利用すれば、将来対応のAIの基盤を通じて、より迅速かつ柔軟な対応が可能です。
Arm CSSの種類
| 市場 | CSS | 主なコンポーネント | 成果物 | 主なメリット |
|---|---|---|---|---|
| クラウド/データセンター | Arm Neoverse CSS | Neoverse CPU、CMN相互接続、システムIP、セキュリティ、管理サブシステム | 完全に統合・検証済みのRTLサブシステム | スケーラブルな演算、迅速なテープアウト、膨大なコア数、時間とコストの削減の実績 |
| モバイル機器 | Arm Lumex CSS | フラッグシップCPU/GPU、フィジカルIP、システムIP | 最先端プロセスノード向けの強化IP(GDSII)を含む、最適化されたシステムコンポーネント | フラッグシップ性能、効率的な演算、パートナーソリューションへの適応、各種ソフトウェア・プラットフォームへの対応 |
| オートモーティブ | Arm Zena CSS | 自動車対応のCPU、組み込みセーフティアイランド、セキュリティエンクレーブ、GPU/ISP搭載のオプションのビジョンコンプレックス | 完全統合型・検証済みのRTLサブシステム | 安全認証取得済みの基盤、開発期間の短縮、ADAS/IVIワークロードの拡張性 |
クラウド/データセンター:Arm Neoverse CSS
ハイパースケール・クラウドプロバイダーにとって、最適なコンピューティングの大規模な提供は最重要課題です。パフォーマンスも不可欠ですが、エネルギー効率と熱設計電力(TDP)は、管理能力、信頼性、デプロイの容易さと同様、運用コストに直接影響を及ぼします。こうした競争の激しい環境では、いかなる世代においても、進化への乗り遅れは決して許容できません。コア数が高く、それに応じてメモリ、相互接続、関連周辺機器も大規模になるインフラストラクチャSoCは、物理的な意味で最大規模の用途です。
Arm Neoverse CSS は、以下の点を考慮した設計となっています。
- 数十から数百の同一の高性能・高効率Neoverse CPUコア
- Arm独自のスケーラブルなCMNメッシュ相互接続とシステム制御の主要コンポーネント
- 事前統合済み・事前検証済みのRTLパッケージと構成オプションの提供により、PPA(消費電力、パフォーマンス、実装面積)をさらに最適化
Neoverse CSSは、高性能インフラストラクチャ・ソリューションの開発を加速し、最初のシリコン製造までの期間を1年以上短縮します。Neoverse CSSにより、パートナーは複雑性の管理を強いられることなく、パフォーマンスと効率性の大規模な実現に専念することが可能です。

ADTechnology、Microsoft、NeuReality、XSight Labsなどの企業はいずれもNeoverse CSSを活用することで、AIデファインドのクラウドデータセンターとネットワークの増強向けに新世代シリコンを構築し、世界中から注目と投資を集めています。
モバイル:Arm Lumex CSS
モバイルソリューションからAR/VRウェアラブル端末に至るまで、今日のコンシューマー機器には、ピーク時のパフォーマンスとバッテリー面で制約のあるシステムの電力効率に加えて、確固たる差別化が要求されます。Arm Lumex CSS(近日発売予定)により、SoC設計者とOEMは、これら3つの要件により迅速に対応できます。
- 高度に構成可能なモジュール型コンポーネントにより、Lumex CSSを使用するチップ設計者は、幅広いフォームファクターとワークロードに合わせてソリューションを自由にカスタマイズできます。Armはパートナーと協力することで、顧客企業の製品目標に応じてカスタマイズされた物理クラスター実装を作成できます。
- 最新のArmv9 CPUコアとMali GPUコアの組み合わせ、最適化されたフィジカルIP(テープアウト対応のGDSII実装など)、高速キャッシュメモリにより、市場投入期間を短縮して、最新・最先端のプロセスノードでクラス最高のパフォーマンスを発揮できます。
- パートナーは業界をリードする性能の評価基準を活用することで、製品サイクルを短縮し、幅広いデバイス層へと拡張できます。一方、消費者は、より応答性と電力効率に優れた没入型の体験を楽しめます。
Arm Lumex CSSは、コンポーネントレベルの構成を使用するか、CSSの機能を最大限に活用するか、いずれかの方法により、モバイルパートナーのソリューションに対するニーズに適した形で提供されます。
Armの現行世代のCSS for Clientは、Samsung Flip 7スマートフォンなどの世界を代表するモバイルパートナーに採用されており、各社は市場投入期間を短縮し、高コストのシリコンスピンを削減しつつ、フラッグシップ性能を達成できます。堅牢な出発点としてのCSSにより、パートナーは研究開発業務を機能のカスタマイズに集中させて、イノベーションの差別化を推進することでエンドユーザー体験を向上できます。
オートモーティブ:Arm Zena CSS
AIドリブンな独自のユーザー体験と高度な安全機能で差別化を図りつつ、開発サイクルを短縮し、競争環境の激化に対応し続けることは、自動車OEMの直面する大きな課題です。こうした要件を満たす上で必要なのは、統合の負担を軽減し、イノベーションのためにリソースを解放してくれる、信頼できる演算の基盤です。ほぼすべての大手自動車メーカーはすでに、自社の自動車プラットフォームでArmを活用しており、Armは次世代の車載コンピューティングにとって当然の選択肢となっています。
Armv9 Automotive Enhanced(AE)テクノロジーをベースとするArm Zena CSSの特長は以下の通りです。
- 高性能コンピューティング、セーフティアイランド、ランタイム・セキュリティ・エンジンを備えた事前検証済みかつ安全性に対応したプラットフォームが、チップの設計期間を最大12カ月短縮し、ソフトウェアの準備期間を最長2年短縮します。
- 先進運転者支援システム(ADAS)、中央演算、車載インフォテイメント(IVI)のユースケースによるスケーラブルな演算の基盤は、モノリシックとチップレットベースの両方のシリコン設計に対応しており、プラットフォームやパフォーマンス層を問わず、再利用を最大限に活用します。
- アクセラレーターおよびパートナー独自ロジックをシームレスに統合し、演算プラットフォームを標準化することで、車載エコシステムは実績ある基盤を活用しつつ、SoCをカスタマイズしてAI対応ワークロードの進化に対応できます。
Zena CSSにより、パートナーは、安全認証を取得し、業界から信頼される演算プラットフォームのサポートに基づき、AIデファインド・ビークルをより迅速・確実に市場投入できます。すでに、大手EVメーカーを含む主要な自動車メーカーや半導体メーカーが、Zena CSSのライセンス契約を締結、あるいは協議の最終段階に入っています。
IoTとエッジAI:Armv9エッジAIプラットフォーム
スマートサーモスタットから視覚ベースの高度なロボットシステムに至るまで、IoTを取り巻く環境は大規模かつ多様で、スピード、拡張性、柔軟性が求められます。産業グレードのエッジAI向けに、Armv9エッジAIプラットフォームは Arm Cortex-A320 CPU と Arm Ethos-U85 NPUを統合しており、10億以上のパラメーターのモデルを実行することでスケーラブルな性能を発揮し、消費電力や実装面積に制約のある環境でリアルタイムの推論と意思決定機能に対応します。
このプラットフォームはArmv9のセキュリティ機能とAIコンピューティング機能に対応しており、開発者にとっては、Armの広範なエコシステムに支えられた、エッジAIのより迅速なデプロイ手段が得られます。
今後の展望
コンピューティングの未来は、より分散化され、用途特化型で、あらゆる業界にとってより中心的な存在となっています。クラウドからエッジまでの分野では新世代のシリコンの技術革新が台頭しつつあり、その多くはArmをベースとしています。Arm CSSは、ArmのAI時代に向けたプラットフォームファーストのビジョンが具現化したものであり、パフォーマンスだけでなく、柔軟性や拡張性、そして現実世界の影響に最適化されたコンピューティングを実現します。
ワークロードの進化に伴い、私たちのプラットフォームも進化します。Arm CSSによって、パートナーは市場投入期間を短縮し、パフォーマンスと効率性を大幅に向上させて、さまざまな市場でスケーラブルなイノベーションを解き放っています。世界で最も柔軟かつ電力効率に優れた演算プラットフォームによって、私たちはエコシステムに長期的な価値を創造しており、未来を形成するアイデアを支えています。
御社の市場に対応するArm CSSの詳細を今すぐご覧いただき、Armベースの未来に向けた道のりを歩み始めましょう。
Armについて
Armは、業界最高の性能と電力効率に優れたコンピューティング・プラットフォームであり、コネクテッドな世界における人口の100%に貢献する比類のないスケールを備えています。Armは、演算に対する飽くなき需要に応えるため、世界をリードするテクノロジー企業に先進的なソリューションを提供し、各社がAIによるかつてない体験や能力を解き放つことができるよう支援しています。世界最大のコンピューティング・エコシステムと2,200万人のソフトウェア開発者とともに、私たちはArm上で築くAIの未来を形作っていきます。
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