3周年の節目を迎えたSOAFEE、その勢いに衰えの兆候はなし
著:ディプティ・ヴァチャーニ(Dipti Vachani)、シニア・バイスプレジデント兼オートモーティブ事業部門ジェネラル・マネージャー
- 3周年を迎えたSOAFEEは、ソフトウェア定義型・AI対応自動車に関する業界のコラボレーションをリード
- General MotorsやTata Motorsなどの新たなメンバーを迎え、SOAFEEのグローバルなコミュニティは今や120社以上の有力企業で構成
- 最新版Armv9オートモーティブテクノロジーをベースとした、AI対応の自動車開発用の最新版リファレンスデザイン、仮想プラットフォームの統合、将来的なArmv9ベースのCompute Subsystemsなど、SOAFEE.nextを通じてさらなる技術開発を予定
4年前に行われた大手自動車OEMとのミーティングでは、ソフトウェア定義型自動車の大規模な導入の妨げとなる3つの課題が示されました。その内容は、他の多くの自動車OEMからも以前に寄せられていた意見と同じもので、ArmとArmエコシステムが、要求されるソリューションを提供可能な独自のポジションを確立していることが明らかになりました。こうした要件の具体的な内容は以下の通りです。
- 大衆車から高級車まで、あらゆる自動車の異なるハードウェアプラットフォームで同一のソフトウェアを使用・移植できること
- クラウドとエッジ(車内)でソフトウェアの一貫性を確保すること
- ハードウェア提供開始前の段階からソフトウェアを開発できることで、自動車全体のAI対応機能に対する需要の高まりに対応し続けること
SOAFEEによって大規模な進化が実現
上記の要件は、その直後に発足したSOAFEE(Scalable Open Architecture for Embedded Edge)の3つの目標となり、イニシアチブによって過去3年間で大きな進化が実現しました。これらを可能にしているのは、120社を超えるメンバー企業との圧倒的なコラボレーションであり、最近では業界をリードするOEMである吉利汽車、General Motors、Tata Motorsを迎え入れるなど、自動車のエコシステムとバリューチェーン全体を網羅しています。
ソフトウェアの一貫性を実現し、シリコンの開発・導入プロセスを後押しするものとして、Armは2025年にオートモーティブ向けArm Compute Subsystems(CSS)の提供を予定していますが、SOAFEEのメンバーシップのおかげで、私たちの目標達成に不可欠な要素である、ソフトウェアソリューションの全く新しいエコシステムがすでに確立しています。
SOAFEE.nextの幕開け
前途有望なSOAFEEの未来に向けて、メンバー各社が技術的成果をいち早く達成し、大きな影響を残せるよう、私たちは確固たる取り組みを進めています。本コミュニティは、絶えず変化する車載アーキテクチャにも対応し続けています。SOAFEEはすでに、最新版Armv9テクノロジーを採用しており、AI対応のソフトウェア定義型自動車(SDV)の導入を拡大しつつ、仮想プラットフォームを通じてソフトウェアソリューションのアクセシビリティを向上させています。SOAFEE.nextでは、以下の新技術が採用されます。
- 新登場のArmリファレンスデザイン-1 AE:最新版Armv9テクノロジーの各種機能(AI、セキュリティ、安全性、仮想化)を活用する車載用 Armリファレンスデザイン-1 AEハードウェアソリューションとSOAFEEベースのソフトウェアソリューションを連携させることで、SOAFEE.nextは、ハードウェアとソフトウェアのリファレンスデザインを統合します。ハードウェアとソフトウェアのミックスト・クリティカルな開発環境を実現し、機能安全とアプリケーションのさまざまなワークロードに対応することから、こうした連携機能の重要度は高く、SOAFEEイニシアチブの歴史を見ても特筆すべき実績といえます。この結果、SOAFEEアーキテクチャを使用することで、さまざまなソフトウェア定義型機能がセーフティクリティカル・レベルの異なる多様な環境に対応できます。
- 仮想プラットフォームを発表:SOAFEEに仮想プラットフォームを統合することで、物理シリコンが不要となり、仮想プロトタイピングを通じてソフトウェアの開発プロセスを迅速化できます。こうしたプラットフォームはCadence、Corellium、SiemensなどのSOAFEEメンバーを通じて提供されており、これらをSOAFEEのリファレンス実装と連携させることで、SOAFEEアーキテクチャの新機能をより迅速に提供できます。
- ブループリントの成功を継承:LG Electronicsが発表した、ミックスドクリティカルなオーケストレーション・プロジェクトのPICCOLO や Lingua Francaを用いて実装される、デンソー発表のミックスト・クリティカル・ソリューションの採用など、SOAFEEのメンバー各社は既存のSOAFEEアーキテクチャを活用することで、市場投入期間を短縮するための一連のブループリントを発表してきました。そして、今回の仮想プロトタイプの発表はこれらに続く当然の流れといえます。SOAFEEのメンバー各社は現在、SOAFEEアーキテクチャを活用した30件以上のプロジェクトに積極的に取り組んでおり、他のメンバー企業と協力することで、プロジェクトを世界中で展開しています。
- バリデーションの手段を拡大:SOAFEEのメンバー全社を対象に、Linaroのバリデーションサービスを拡大することで、SOAFEE.nextでは、ソフトウェアの保証とサービスも進化させています。この取り組みはSOAFEEとLinaroの最初の統合ラボが基盤となっており、これによりメンバー各社は、自社独自のリモートラボを通じて、SOAFEEアーキテクチャの実装の妥当性を確認できます。
将来のSDVのビジョンをともに実現
こうした素晴らしい実績と魅力的な将来計画に基づき、SOAFEEベースのソフトウェアソリューションを採用したAI対応SDVを市場で販売するという、私たちのビジョンは実現へと向かっています。こうしたビジョンに対するコミットメントの一環として、Armのスラジ・ガジェンドラ(Suraj Gajendra)はSOAFEEガバメントボディの新会長に就任。しており、SOAFEEの開発を次のフェーズへと推し進める上で、同氏の豊富な業界経験が活かされることが期待されます。
AI対応SDVを実現するには、SOAFEEを創設メンバーとして今年発足したSDV Allianceなどのイニシアティブを通じ、SOAFEEの枠組みを超えたエコシステム全体でのさらに大規模なコラボレーションが必要です。このアライアンスは、AUTOSAR、COVESA、Eclipse SDVなどの重要なSDVコミュニティと協力し、ソフトウェア定義型自動車の未来に向けて前進するためのさらなる機会です。
自動車業界独自のソフトウェアの課題を1社単独で解決することは不可能といえます。過去3年間のSOAFEEの実績からも明らかな通り、私たちが力を合わせることで、圧倒的な成果を達成できることを確信しています。SOAFEEメンバー全社との協力を通じて、私たちはArmベースの自動車業界のトランスフォーメーションを牽引すべく尽力していきます。
Armについて
Armは、業界最高の性能と電力効率に優れたコンピューティング・プラットフォームであり、コネクテッドな世界における人口の100%に貢献する比類のないスケールを備えています。Armは、演算に対する飽くなき需要に応えるため、世界をリードするテクノロジー企業に先進的なソリューションを提供し、各社がAIによるかつてない体験や能力を解き放つことができるよう支援しています。世界最大のコンピューティング・エコシステムと2,000万人のソフトウェア開発者とともに、私たちはArm上で築くAIの未来を形作っていきます。
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