AWS Gravitonのイノベーションを支える用途特化型プロセッシングが、Armベースのクラウド・コンピューティングの時代をけん引

December 07, 2021

 

著:クリス・バーギー (Chris Bergey) / Arm インフラストラクチャ事業部門シニア・バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー

AWSがAnnapurna Labsを買収した2015年当時、同社はNitroシステムによってクラウドの提供形態を変革するというビジョンを持っていました。そして今では、Gravitonがこうしたイノベーションの流れを受けて、インフラストラクチャ・スタック全体を通じて選択肢を拡充し、最高の顧客体験を追求しています。AWSによるクラウドからエッジにいたるサービスが拡大する中、両社の継続的なコラボレーションを通じて、次世代インフラストラクチャの真の可能性を引き出すための用途特化型の処理に対するニーズの高まりが浮き彫りになりました。

AWSのGravitonとGraviton2によって、Armベースのコンピューティングがクラウド環境で実現するメリットと、さまざまな業界の顧客企業と開発者にもたらされる柔軟性が明らかになりました。こうしたArmベース・プロセッサーの成長と成功は、とどまるところを知りません。Armベースのクラウドインスタンスが持つ価格性能比の優位性は、次のようにAWSのサービスポートフォリオ全体に浸透しています。

  • AWSでは、ArmベースのGraviton2プロセッサーの採用が急速に進んでおり、3億5000万以上の登録アカウント数を有するビデオゲーム「Fortnite」を運営するEpic Gamesや、世界最大級の写真サイトであるSmugMug/Flickr、Formula 1、Snap Inc.など、多数の顧客企業に利用されています。
  • ArmベースのGraviton2を搭載したインスタンスは、世界23リージョンにまたがる9つのインスタンス・ファミリーを誇ります。Androidゲームのストリーミングや機械学習(ML)の推論に最適な価格性能比を発揮するG5gインスタンスや、大規模ストレージを多用するアプリケーションに最適な価格性能比を発揮する最新のIm4gn/Is4genインスタンスなど、これまで以上に多様なサービスポートフォリオを展開していきます。
  • ArmベースのGraviton2を搭載したマネージドサービスにより、顧客企業はGraviton2のメリットをこれまで以上に迅速かつ簡単に実現できます。
  • ArmベースのGraviton2は、小売店、支社・支店、ヘルスケア関連企業の拠点や工場フロアなど、スペースに制限のある、あるいは低レイテンシーの演算を必要とするオンプレミスおよびエッジロケーション向けに設計されたAWS Outposts Serversでも利用可能となりました。
  • 年間で最も多忙なEコマースのビッグセールである「Amazonプライムデー」を大規模にサポートする上で、AWS Graviton2インスタンスはますます重要な役割を果たしています。AWSチームにとって、このことはArmアーキテクチャがクラウド環境に適していることを裏付ける強力な指標となりました。

データセンターのワークロードとインターネットのトラフィックは、2年ごとに約2倍となるペースで増加していることから、演算に伴うCO2排出量の増加を抑える上で、ワットあたり性能のメリットが極めて重要となります。クラウド分野でのArmの成長は、コア単位での一貫したパフォーマンスと拡張性をもたらしており、開発者にとっては持続可能なイノベーションのための選択肢が得られるとともに、スケーラブルな性能と効率性の組み合わせは業界屈指の総保有コスト(TCO)を実現します。AWS Nitroに始まり、2018年に初導入されたGravitonインスタンス、そして現在に至るまで、Arm IPのメリットをクラウドコンピューティング市場に示す上で、AWSは重要な役割を果たしています。

AWSはこのたび、演算集約型のワークロードで25%の性能向上をもたらすAWS Graviton3を通じ、Armテクノロジーの新たなマイルストーンを達成しました。さらにGraviton3は、機械学習、ゲーム、メディア・エンコーディングのワークロードで最大2倍の浮動小数点性能、暗号ワークロードでも最大2倍の高速処理を実現します。Graviton3はbfloat16データをサポートしており、機械学習ワークロードのパフォーマンスは3倍向上します。こうしたメリットと同時に、エネルギー消費は最大60%削減されます。

さらにAWSは、新しいGraviton3プロセッサーを搭載したC7gインスタンスを公開し、これらはプレビュー版で利用可能です。C7gは、Arm Neoverseによって利用可能なDDR5をサポートする最初のクラウドインスタンスで、より多くのメモリ帯域幅を確保し、さらなるパフォーマンスの向上を実現します。Twitterなどの顧客企業は、すでにベータ版でC7gインスタンスをテストしており、C6gインスタンスと比較して20~80%の性能向上が確認されています。

 

Graviton3

 

ArmベースのGravitonプロセッサーの性能、コスト、効率性の優位性は、Arm社内でも強力なメリットを発揮しています。私たちは昨年、グローバルでのデータセンター設置面積の削減だけでなく、無制限の弾力性を活用するため、設計・検証用EDAワークロードのかなりの部分をAWS Graviton2インスタンスに移行しました。これにより、従来型プロセッサーの使用時に比べて、一部のEDAワークフローに要する時間は6分の1に、コストは30%削減されました。性能を最大限に発揮しエネルギー消費量を最小限に抑えた形で、複雑なワークロードのさらなる移行を進める上で、Graviton3インスタンスのもたらすパフォーマンスの向上には、私たちも大いに期待しています。

Gravitonプロセッサーファミリー向けに最適化されたHPCやクラウドネイティブ・アプリケーションのエコシステムの拡大からも分かる通り、高性能と低消費電力、低コスト、柔軟性、互換性の組み合せは、次の時代のコンピューティングにおける基本原則といえます。新時代のクラウドコンピューティングにおいて、Graviton3は、効率性アップにおける用途特化型プロセッシングのメリットを示しながら、幅広い用途に対してさらに魅力的な価格性能比を提供するという上昇気流をもたらすことを期待しています。

参考資料
AWS Announces Graviton Challenge Winners (英文)

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