スーパーコンピューターからデータセンターへ:Armを活用した富士通の事業拡大

December 12, 2025

富士通の新型「FUJITSU-MONAKA」プロセッサーは、Armアーキテクチャを基盤としており、スーパーコンピューティング性能、エネルギー効率、次世代のセキュリティでデータセンターとエッジコンピューティングを変革するものと期待されます。


Futuristic data center hallway glowing with blue digital light.


企業がAIワークロードの急増とエネルギーコストの高騰に直面する中、コンピューティングの経済性は、かつてない圧力に直面しています。クラウドやデータセンター向けの従来型のアーキテクチャは、AIの能力向上や需要増とコストのバランスを図る上で必要なパフォーマンス、効率性、拡張性の提供で悪戦苦闘しています。

富士通の「A64FX」プロセッサーを搭載したスーパーコンピューター「富岳」が世界最速の称号に輝いた時、Armアーキテクチャが地球上で最も要求の厳しい計算ワークロードを処理できるという重要な事実を裏付けました。しかし、この偉業は特筆すべき内容である一方、Armテクノロジーによる富士通の意欲的な取り組みの序章に過ぎませんでした。

富士通は現在、大胆な戦略転換を図っています。この戦略は、同社の事業を再構築するとともに、データセンターを取り巻く広範な環境にも影響を及ぼす可能性があります。FUJITSU-MONAKAプロセッサーを通じ、スーパーコンピューティング分野の実績、Armの高性能・高効率CPUアーキテクチャ、進化し続けるエコシステムを活用することで、同社はエンタープライズ、クラウド、エッジ環境向けの強力かつ革新的な最新の演算プラットフォームを提供していきます。

実績のある基盤に基づく戦略的拡大

富士通の評判は、ハイパフォーマンス・コンピューティング向けのパフォーマンスに最適化された用途特化型プロセッサーの開発(SPARCプロセッサー時代まで遡る)によって築かれてきたものです。同社のA64FXは、ArmのScalable Vector Extension(SVE)とHBM2メモリの革新的な使用により、こうしたアプローチを体現しており、フラッグシップ・スーパーコンピューターの単一プロジェクト向けに設計された専用チップとなっています。

一方、FUJITSU-MONAKAは、根本的に異なる戦略を採用しています。富士通はこのFUJITSU-MONAKAを、ニッチプロジェクト向けの設計ではなく、広範なデータセンター市場のほか、通信インフラストラクチャやエッジAIアプリケーションなどのエッジコンピューティング環境で採用するための、スケーラブルかつ商用展開可能なプロセッサーとして位置付けています。同社はFUJITSU-MONAKA CPUを、日本国内外のエンタープライズやソーシャル・インフラストラクチャ向けに広く提供する予定であり、このことは規模と市場フォーカスの大幅な転換となる見通しです。

この事業拡大は、単にチップの販売数量を増やすことが目的ではありません。AIの色合いが濃くなっている急成長中のデータセンター市場において、富士通が信頼できる代替ソリューションとしての地位を確立することです。Armv9アーキテクチャを基盤とすることで、富士通は現在、成熟しつつも成長を続けるエコシステムを活用すると同時に、コンパイラ/ソフトウェアをAIワークロード向けに最適化することや、信頼性エンジニアリング、エネルギー効率に優れた設計に関する自社の高度な専門知識によって貢献を行っています。

FUJITSU-MONAKAの設計は、データセンターを成功へと導く3つの戦略的な優先事項を反映しています。
動画を見る -- NEW CPU: FUJITSU-MONAKA

AI/HPCワークロード向けの高性能とSVE2による高度なベクトル処理

FUJITSU-MONAKAは、ArmのScalable Vector Extensions 2(SVE2)を実装することで、実環境のHPC/AIパフォーマンスを高速化します。SVE2は、利用可能なシリコンに基づいて一度に処理する 演算の数を最適化し、プロセッサーの大容量データ操作の全体的なパフォーマンスを強化します。その際、他のオフチップ・アクセラレーターは不要です。

この技術は、科学演算、工学シミュレーション、AIの学習タスクなど、高価値なデータセンター/AIアプリケーションを代表するベクトル集約型ワークロードに特に有効です。SVE2向けに最適化された一般的なフレームワークやライブラリの多くは、FUJITSU-MONAKA上でこうしたパフォーマンスのメリットを活用できます。HPCの開発で富士通が長年培ってきたコンパイラ技術の実績と、Armのソフトウェアエコシステムやコラボレーション能力が組み合わさることで、ソフトウェアはこの演算能力を効率的に活用し、AI/HPCアプリケーションを高速化できます。

大規模なエネルギー効率化

データセンターがエネルギーコストの高騰と持続可能性の要請に取り組む中、電力効率は、競争上の差別化要因となっています。FUJITSU-MONAKAは、パフォーマンスの2倍と電力効率の2倍を目標としています。そして、既存のデータセンターの刷新と、より高密度な計算と電力供給を前提としたAI中心の新規ビルドの両方に対応できるよう、多様な要件に応じて空冷と水冷両方のインフラストラクチャ向けに最適化された設計を採用しています。こうした取り組みは、2030年までに国内データセンターのエネルギー消費量を40%以上削減することを目指す、日本の「グリーンイノベーション基金」プロジェクトと直接連携しています。クラウドプロバイダーやエンタープライズ向けデータセンターにとって、こうした効率化は、運用コストと二酸化炭素排出量の低減に直接寄与します。

コンフィデンシャル・コンピューティングがセキュアなワークロードを実現

データのプライバシーとセキュリティが最優先事項となるこの時代で、FUJITSU-MONAKAは、Armv9 Realm Management Extension(RME)機能などのArmのConfidential Computing Architecture(CCA)を実装しています。この信頼できる実行環境に対するハードウェアベースのアプローチにより、マルチテナントのクラウド環境、規制産業、機密性の高い官公庁アプリケーションに不可欠な、ワークロードのセキュアな分離が実現します。CCAのサポートをシリコンレベルでゼロから組み込むことで、富士通はFUJITSU-MONAKAを、セキュリティ要件により通常は共有インフラの採用が難しい環境にも適した製品として位置づけています。

詳細については、Armのコミュニティブログ(英文)をご参照ください。

パッケージングと設計のイノベーション

FUJITSU-MONAKAの技術仕様からは、最先端分野で勝負しようとする富士通の意欲的な姿勢が分かります。このプロセッサーは、先進的なチップレットアーキテクチャを採用しており、2nmの演算ダイと5nmのSRAMキャッシュダイを相互接続させています。さらに、これらの3Dチップレットは、2.5Dインターコネクトを介して5nmのI/Oダイと接続しています。デュアルソケットで最大288コアまで拡張可能な構成、DDR5メモリ、PCIe 6.0、CXL 3.0のサポートにより、FUJITSU-MONAKAは、高負荷のデータセンターワークロードに必要なI/O帯域幅とメモリ容量を提供します。

キャッシュダイ上に演算ダイを積層し、すべてを中央のI/Oダイに接続するこのチップレットのアプローチは、モノリシックなA64FX設計からの大規模な進化であり、歩留まりの向上、より柔軟な構成、複数のプロセスノードの最適な活用を実現します。

富士通が「メインフレームクラス」の信頼性を強調しているのは、生のパフォーマンスだけでなく、エンタープライズ顧客が求めるオペレーショナルエクセレンスでも勝負しようとする同社の意向を示すものです。

エコシステムの構築

特筆すべきは、富士通がこの取り組みを単独で進めているわけではないことです。FUJITSU-MONAKAの市場ポジションを強化すべく、同社は以下の通り戦略的パートナーシップを強化しています。

  • SVE2の最適化とオープンソースソフトウェアの実現に関するArmとのコラボレーションによって、Armの広範なエコシステムは、FUJITSU-MONAKAの成功の恩恵を享受しつつ、これに貢献できます。

上記に加えて、富士通はSupermicroとの戦略的コラボレーションを通じ、グローバルな展開を強化しています。このほか、付加価値を創造すべく、同社は現在、戦略的パートナー各社とのGPUのコラボレーションを通じたエコシステムの拡大にも取り組んでいます。

こうしたパートナーシップは、データセンター分野で成功を収めるには、卓越したシリコンだけでなく、ハードウェア、ソフトウェア、エコシステムサポートの包括的なスタックが必要であるという、成熟した理解を裏付けるものです。

より幅広い意味

FUJITSU-MONAKAを通じ、富士通がHPCからデータセンターへと事業を拡大していることには、1社の戦略にとどまらないインパクトがあります。このことから、Armのアーキテクチャとソフトウェアエコシステムが、演算集約型のAI/HPCワークロードの全分野に対応できるまでに進化していることが分かります。エネルギー効率、柔軟なベクトル処理、強力なシングルスレッド性能など、スーパーコンピューティング分野で富岳の実績を可能にしたものと同じアーキテクチャの機能が、今後は大規模な商用データセンター環境をサポートします。

業界にとって、FUJITSU-MONAKAもまた、データセンター分野でのArmの勢いを裏付ける証拠の1つです。ワークロードが多様化し、効率性が最優先事項となる中、さまざまな制約に合わせて最適化されたレガシーなアプローチとは対照的に、エネルギー効率に優れたスケーラブルな演算を実現するため特別設計されたアーキテクチャには、競争上の優位性が存在します。

今後の展望

2027年の一般提供開始を予定するFUJITSU-MONAKAは、構想から現実の段階へと移行しつつあります。FUJITSU-MONAKAの後継製品にあたる「FUJITSU-MONAKA-X」もすでに発表されています。この製品は「富岳NEXT」への採用が予定されており、スーパーコンピューティング分野での富士通の伝統を継承しつつ、これをワンランク上に引き上げると同時に、商用データセンターやエッジコンピューティング用途(通信や分散型AIワークロードなど)も対象としています。

データセンター分野では、効率性、セキュリティ、パフォーマンスのニーズに牽引される形で、既存のレガシー・アーキテクチャの代替案が求められています。こうした状況の中、富士通のArmへのコミットメントは、コンピューティング環境を再構築し得るアーキテクチャとしての正当性を示すとともに、重要なビジネス機会の裏付けにもなるものです。

脚注

[1]FUJITSU-MONAKA:FUJITSU-MONAKAに適用されるこの新技術は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成プロジェクトで得られた成果に基づくものです。

Armについて

Armは、業界最高の性能と電力効率に優れたコンピューティング・プラットフォームであり、コネクテッドな世界における人口の100%に貢献する比類のないスケールを備えています。Armは、演算に対する飽くなき需要に応えるため、世界をリードするテクノロジー企業に先進的なソリューションを提供し、各社がAIによるかつてない体験や能力を解き放つことができるよう支援しています。世界最大のコンピューティング・エコシステムと2,200万人のソフトウェア開発者とともに、私たちはArm上で築くAIの未来を形作っていきます。

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