AIエージェントが変えるCPU性能の評価基準

October 13, 2026

英Arm(本社:英国ケンブリッジ、日本法人:神奈川県横浜市、以下Arm)は、富士通、Meta、OpenAIの協力のもと、CPU性能の新たな評価手法を発表しました。また、第三者機関による検証の結果、Arm AGI CPUは主要なx86サーバープロセッサと比較して、ラック当たり推計で最大約2倍の性能を実現することが確認されました。


AIエージェントは依然として発展途上にあるものの、その活用は急速に拡大しています。アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)が紹介したOpenRouterのデータによると、2026年2月以降、エージェントトークンの使用量は約14倍増加しています。

インフラの観点から見ると、AIエージェントは、それぞれが休むことのない専用のコンピューティング環境を持つ仮想ユーザーのような存在です。AIエージェントは動作状態の整合性を維持しながらコンテキストを取得し、ツールやサービスを利用して処理を実行し、タスクが完了するまで結果の評価を行います。

こうしたAIエージェントが24時間365日、数百万から数十億規模で稼働すると、コンピュート、メモリ、ストレージ、I/Oのすべてが、絶え間なく同時に実行される膨大なタスクに対応する必要があります。その結果、CPUには新たな要件が求められるようになるとともに、システムがAIエージェントによる実際の処理をどの程度効率的に実行できるかを実用的に測定することが重要になります。

仮想ユーザーのためのデータセンターを構築する

エージェンティックAIは、AIデータセンターの多岐にわたる領域でコンピューティング需要を生み出します。CPUは、コンテキストの整合性維持、ツールの呼び出し、データへのアクセスを行いながら、エージェントのワークロードを実行します。また、AIヘッドノードでは、CPUがワークロードのスケジューリング、データの準備と移動、システム全体の調整を担い、高価なアクセラレータを休ませることなく、その性能を最大限に引き出します。

エージェントは、クラウドネイティブな処理も増加させます。検索、サービスの呼び出し、コード実行、データ要求といったあらゆる操作が、その基盤となるインフラ全体で処理されます。エージェンティックAIは、こうしたクラウドネイティブな需要に取って代わるのではなく、むしろそれをさらに拡大させます。

また、エージェントの自律性が高まり、利用できるツールやデータが増えるにつれて、実行環境のセキュリティ確保も同様に重要になります。ホストCPUがエージェントの実行に専念する一方で、DPUやその他のインフラストラクチャプロセッサは、ネットワーク、ストレージ、ポリシー適用、テレメトリー、隔離を担う独立した処理基盤を提供します。Armは、クラウドおよびエージェンティックAIのワークロードを実行するCPUから、セキュリティとインフラ制御を担うDPUまで、このアーキテクチャの両側面を支えています。

OCP Global Summitでは、こうした取り組みが実際のシステムとして形になりつつある様子をご覧いただけます。Armは現在、Arm AGI CPUリファレンスサーバーの提供を進めており、MetaのYosemite YV5は、AGI CPUをOCPのラックスケール設計に導入しています。

実用的な性能測定が重要

これは、CPU性能の評価基準そのものを変えるものです。エージェンティックAI向けのコンピューティングでは、応答性を維持しながら、どれだけ多くの処理を同時に完了できるかが重要になります。AIヘッドノードでは、CPUがアクセラレータの稼働率をどれだけ高く維持できるかが問われます。クラウドネイティブなインフラでは、それぞれの処理をどれだけ迅速かつ予測可能な形で提供できるかが重要です。

エージェンティックなワークロードでは、高負荷時の性能の重要性がますます高まっています。理論上の処理能力が高くても、システムの利用率上昇に伴ってスループットが低下すれば、完了できるタスク数が増えるとは限りません。重要なのは、電力や物理的な制約の範囲内で、インフラがどれだけ多くの有効な処理を実際に理論通り実行できるかです。

Armは、長年にわたりハイパースケールデータセンターを支えてきた経験を通じて、コンピューティング要件の変化を幅広く把握しています。その知見を基に、Armは富士通、Meta、OpenAIの協力のもと、エージェンティックAI向けCPU性能を評価する新たな手法を策定しました。このフレームワークは、「代表的なエージェンティックAIのユースケース」、「再現性のあるCPU測定」、そして「エンドツーエンドの成果に照らした検証」という3つの原則に基づいています。

コンポーネントレベルでの測定により、モデル推論やネットワークといった変動要因からCPU性能を切り分けて評価できます。そのうえで、エンドツーエンド評価によって、そうした性能向上が実際のタスク成果の向上につながっているかを確認します。

エージェントのアーキテクチャやソフトウェアは今後も進化を続けるため、この評価手法もそれに合わせて発展していく必要があります。

Armの評価手法の詳細については、ホワイトペーパーをご覧ください。

Arm AGI CPUの性能を検証

本アプローチに準拠したワークロードを用いて、第三者機関であるSignal65が、ツール利用、オーケストレーション、推論・計画立案の各領域において、Arm AGI CPUとAMD EPYC Turinの比較検証を行いました。両プラットフォームで同一のベンチマークスクリプトを使用し、サーバー単位で測定した性能を基に、透明性の高いラック単位のモデリング(推計)を行いました。

主な検証結果は以下のとおりです。

  • ラック当たりの処理能力は約2倍:Arm AGI CPUは、7種類のワークロードにおいて、推計値でAMD EPYC 9755と比較してラック当たり平均1.99倍の性能を達成しました。これは、より高いコンピュート密度と優れた電力効率によるものです。
  • エージェンティックAIワークロード全体で高い性能を発揮:Arm AGI CPUは、主要なエージェンティックAIワークロード全般において、推計値でより高いラック単位の性能を示しました。ツール利用では平均1.7倍、エージェントワークフローおよびオーケストレーションでは平均2.0倍、推論・計画立案では平均2.2倍の性能を記録し、エージェンティックAIの多様なコンピューティング需要に対応できることを示しました。
  • より高速で応答性の高いエージェント実行:Arm AGI CPUは、AMD EPYC 9965と比較して、サンドボックス環境の作成にかかるレイテンシを最大45%削減しました。これにより、エージェントは隔離・独立した実行環境をより迅速に起動でき、エージェント運用に伴うオーバーヘッドの低減に貢献します。

ラック単位の評価が重要となるのは、データセンターが電力、冷却性能、設置スペースといった制約の中で運用されているためです。特に、より多くのエージェントやタスクが同時に実行されるようになる中で、インフラ運用者にとって重要なのは、こうした制約の範囲内でどれだけの有効な処理を、実際に理論通り実行できるかを把握することです。

Signal65による分析レポートはこちらをご覧ください。

Arm AGI CPUは、こうしたワークロード特性を踏まえて設計されており、高いコア密度、コアごとに割り当てられた専用メモリ、高帯域幅I/Oを備え、高負荷時に理論通りの処理実行を支援します。

AIエージェントの役割は、単にプロンプトに応答する段階から、絶え間なく業務を実行する段階へと進化しています。それに伴い、インフラは個々のエージェントからラック全体に至るまで、タスクをどれだけ効率的かつ安定的に完了できるかという観点で評価される必要があります。より適切な評価手法により、業界全体がボトルネックの特定やシステム間の比較をより的確に行えるようになるほか、エージェンティックAIインフラの拡大に合わせた実用的な改善を促進できます。

エージェンティックAIの性能に関する業界の見解

富士通株式会社 富士通研究所 先端コンピューティング開発本部本部長の吉田利雄氏は次のように述べています。「エージェンティックAIの進化に伴い、CPU性能の評価には、従来の指標を超えて実際のワークロードを反映するベンチマークが求められています。富士通は、次世代の高性能かつ電力効率に優れたArmベースのCPU『FUJITSU-MONAKA』の開発を進める中で、透明性、再現性、そして実運用を反映した評価の重要性を認識しています。富士通は、業界全体の連携を促進し、次世代AIインフラの最適化を支援するArmの取り組みを歓迎します」

MetaのソフトウェアエンジニアAbhishek Dhanotia氏は次のように述べています。「エージェンティックAIが本番環境で運用されるようになるにつれ、さまざまなワークロードがその基盤となるインフラをどのように利用しているのか、業界ではより高い可視性が求められています。私たちは、より一貫性のある比較基準の確立に向けたArmの取り組みを支持しており、それがシステムの進化の方向性を検討するうえで有益であると考えています」

OpenAIのフォワード・デプロイド・エンジニアリング グローバルヘッドである Colin Jarvis氏は次のように述べています。「AIシステムは、応答を生成する段階から、推論、ツール利用、ソフトウェア環境との連携を通じて複雑なタスクを遂行する段階へと移行しつつあります。エージェントの能力向上と普及が進む中、オーケストレーションやツールの実行を含む、こうしたワークフローを支えるインフラの性能を理解することは、業界にとって重要なテーマとなっています。これらの新たなワークロードの特性を把握し、AIシステム全体の性能を最適化するためには、実運用を反映したベンチマークの策定に向けた業界横断的な協力が重要になります」

Armについて

Armは、業界最高の性能と電力効率に優れたコンピューティング・プラットフォームであり、コネクテッドな世界における人口の100%に貢献する比類のないスケールを備えています。Armは、演算に対する飽くなき需要に応えるため、世界をリードするテクノロジー企業に先進的なソリューションを提供し、各社がAIによるかつてない体験や能力を解き放つことができるよう支援しています。世界最大のコンピューティング・エコシステムと2,200万人のソフトウェア開発者とともに、私たちはArm上で築くAIの未来を形作っていきます。

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