Cortex-Rプロセッサのアプリケーションの例

こうしたアプリケーションにおけるシステムでは、処理応答に対して厳しいデッドラインが設定されています。 データの損失や機械的な損傷を回避するためには、そのデッドラインを守る必要があります。 そのため、Cortex-Rプロセッサは、エネルギー効率とコスト効率を維持したままで、非常に確定的な動作で高い性能、信頼性、およびエラー耐性のニーズに対応するように設計されています。

Cortex-R4、Cortex-R5およびCortex-R7プロセッサの基盤となっているのは、自動車安全性やワイヤレス ブロードバンドなど、ディープ エンベデッドおよびリアルタイム市場で求められている主な機能です。 この機能は次のようにまとめることができます。
この機能セットが、Cortex-MおよびCortex-Aシリーズ プロセッサとは異なるCortex-Rの特徴です。 特に、Cortex-Rは性能がCortex-Mシリーズよりも非常に優れています。一方、Cortex-Aは、仮想メモリ管理を行う複雑なソフトウェア オペレーティング システムを使用するユーザ アプリケーションをターゲットとしています。
Cortex-Rプロセッサでは、ARM7TDMI-S、ARM946E-S、ARM968E-S、ARM1156T2-SなどのClassic ARMプロセッサとのバイナリ互換性を維持しているため、自動車システムでの使用が認定されているコードや従来のソース コードが使用できない場合に便利です。 そうしたエンベデッド システム プロセッサでは、通常、リアルタイム オペレーティング システム(RTOS)を実行します。仮想メモリ管理ユニット(MMU)は必要ありません。 しかしながら、リアルタイムARMプロセッサでは、メモリ保護ユニット(MPU)と、すぐにアクセスできるようにコードおよびデータをプロセッサの近くに保持する密結合メモリ(TCM)をサポートしています。

Cortex-Rプロセッサは、要求の厳しいリアルタイム ソリューション向けに設計されており、ASIC、ASSP、およびMCUのSoC(System-on-Chip)アプリケーションで広く使用されています。 このファミリにはCortex-R4、Cortex-R5およびCortex-R7の3つのメンバーがあり、これらの製品が特に対象としている市場は次のとおりです。
製品タイプ | アプリケーション |
携帯電話 | 3G、4G、LTE、WiMax スマートフォンおよびベースバンド モデム |
ストレージ | ハード ディスク コントローラ、ソリッド ステート ドライブ コントローラ |
エンタープライズ | ネットワーキングおよびプリンタ(インクジェットおよび多機能プリンタ) |
ホーム | デジタルTV, BluRayプレーヤおよびポータブル メディア プレーヤ |
カメラ | デジタル スチル カメラ(DSC)およびデジタル ビデオ カメラ(DVC) |
エンベデッド | 医療、産業、ハイエンドのマイクロコントローラ ユニット(MCU) |
エアバッグ、ブレーキ、安定性、ダッシュボード、エンジン管理 |
これらのアプリケーションには共通する一連の要件があります。以下にその例を示します。
携帯電話では、ユーザにさまざまな機能、オーディオ、ビデオ、およびインターネット サービスを提供するために、高いデータ レートのワイヤレス ブロードバンドを導入するようになってきています。 第4世代以降も長期にわたって発展を続けるモバイル テクノロジに対応したハンドセットでの処理には、複雑なソフトウェア プロトコル スタックが必要です。それによって、モビリティ、接続、セキュリティ、データ トラフィック、および無線インタフェース モデムの管理をリアルタイムで実行できます。 先進のマルチコアSoCでは、これらのタスクにCortex-Rプロセッサを使用し、ユーザ アプリケーション用にCortex-Aシリーズ プロセッサを実装します。 携帯電話製品では、常に低いコストと消費電力が成功の秘訣です。
ハード ディスク ドライブは、以前からエンベデッド プロセッサにとって最も要求の厳しいアプリケーションの1つです。Cortex-Rは、主要メーカーのほとんどに採用されています。 企業ネットワークおよびインターネット データ センターの急速な拡大に伴って、ストレージ容量は指数関数的に増加しています。 また、コンシューマはたくさんの音楽および動画をPCのディスクやNAS(ネットワーク接続型ストレージ)デバイスに保存しています。 データが増えると、必要な帯域幅も増えます。最新のドライブでは、4 MbpsのUSB-3および6 MbpsのSATAを使用したデータ トラフィックをサポートしています。 ドライブ内では、高速なサーボ制御システムによって、ディスクの回転とヘッドの位置を管理し、非常に高いデータ レートでチャネル処理信号の読み出し/書き込みを行っています。
自動車用の電子制御ユニット(ECU)は、最新の乗用車やトラックに広く採用されています。 エンジン管理およびエンターテインメント アプリケーションのほかに、車両の安定性、ステアリング、アンチロック ブレーキ、衝突防止、エア バッグの展開などのアプリケーションによるドライバー支援および安全システムに対する要求が高まっています。 こうしたシステムでは、さまざまなセンサからデータを読み取り、浮動小数点アルゴリズムを頻繁に使用する計算を実行し、必要な制御信号を送信するため、高性能な処理を行う必要があります。 何よりも、そうしたシステムにはリアルタイムの制約に合わせて実行できる高い信頼性が必要です。
3つのCortex-Rプロセッサがこれらの市場に提供している機能の詳細は、ファミリの機能ページを参照してください。
こうしたアプリケーションにおけるCortex-Rリアルタイム プロセッサの基本的な特性を以下に示します。
リアルタイム アプリケーションのための高効率と高周波数
すべてのCortex-Rプロセッサは、40 nm Gプロセスで1 GHzに達する高いクロック周波数で動作するために、高性能で深いパイプラインのマイクロアーキテクチャを採用しています。 このマイクロアーキテクチャには、実行する命令フローを維持するために、命令のプリフェッチ、キュー、および分岐予測が含まれています。ハードウェア除算および浮動小数点ユニットも含まれています。このプロセッサにはスーパースカラ機能があり、それによって、競合するリソースを必要としない命令を並列で実行できます。 ARMのAMBA 3 AXI(Advanced eXtensible Interface)バスを使用して、メモリおよびペリフェラルにアクセスする際の性能を最大限に引き上げます。 Cortex-R4以降のプロセッサは、40 nm Gプロセスで1,500 Dhrystone MIPSの性能を実現します。
高い信頼性をもたらす確定的な動作の実現
Cortex-Rプロセッサでは、イベントおよび割り込みに対する迅速で確定的な応答により、リアルタイム システムに対応します。 SoC設計者は、割り込みインタフェースおよび外部の割り込みコントローラを選択して、割り込みの回数、割り込みマスク、優先度などの機能と応答時間のバランスを最適化できます。 割り込み応答を数サイクル以上も遅延させる可能性がある命令を停止および再開できます。 また、Cortex-Rプロセッサは、常にすぐに処理できるように命令またはデータを保持できるローカルのRAMまたはフラッシュ メモリへの密結合メモリ(TCM)インタフェースも備えています。 TCMは、処理時間が重視されるイベント用の割り込みサービス ルーチンなどのコードを保持するのに使用できます。 専用のAXIスレーブ バス インタフェース経由でDMAを使用すると、TCMに対するデータの読み込みおよび書き込みを迅速に行うことができます。 これらの機能により、システムはリアルタイム イベントに対して迅速で確定的に応答できます。
多機能でコストが重視されるアプリケーション向けに構成可能
Cortex-Rシリーズの重要な側面は、設計者がアプリケーションの要件に的確に合わせてプロセッサの機能を選択できるコンフィギュラビリティです。 これらのオプションにより、Cortex-Rプロセッサはさまざまなエンベデッド アプリケーションに対応でき、設計者は最終的なASICまたはASSPデバイスの機能および性能と、消費電力、面積、およびコストの間でトレードオフすることができます。 以下はその一例です。
| 市場区分 | ストレージ | モバイル ベースバンド | イメージング/ワイヤレス | 自動車 |
|---|---|---|---|---|
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| メモリ保護ユニット | なし | あり | あり | あり、12領域 |
| キャッシュ | なし | あり | あり | 場合による |
| ECC/ パリティ | N/A | なし | なし | あり |
| TCMポート | 3 | 3 | なし | 2 |
| 浮動小数点ユニット | なし | なし | なし | あり |
| ブレークポイント/ウォッチポイント | 最小 | 中程度 | 最大 | 最大 |
ARM Connected Community のメンバーおよびその他の組織は、コンパイラ、デバッガ、リアルタイム オペレーティング システムなど、Cortex-Rプロセッサ用のツールおよびソフトウェアを提供しています。 また、マイクロコントローラ ハードウェア、モバイル ベースバンド プロトコル スタック ソフトウェアなど、特定のハードウェアやソフトウェア製品のプロバイダも含まれています。 詳細については、以下のロゴをクリックしてください。
